ジーンズカジュアル専門店のライトオンは8日、ワールド系の投資会社によるTOB(株式公開買い付け)を受け、新体制下での5カ年の中期経営計画を発表した。「聖域なき構造改革」を旗印に、不採算店の大規模退店や人員削減を断行した後、ワールドの生産やITのリソースを活用し、事業を軌道に乗せる。24年8月期実績の売上高380億円、営業損失50億円に対し、最終年度の29年8月期目標として売上高254億円、営業利益15億円を掲げる。事業規模を縮小させつつ確実に利益を生み出せる体質を作る。
「単独での事業継続は困難」
8日夜のライトオンの24年8月期決算説明会で発表した。ライトオンの藤原祐介社長、大友博雄・取締役管理本部長と一緒に、次期社長に内定したワールドのグループ常務執行役員の大峯伊索氏、TOBを発表したW&Dインベストメントデザインの共同代表である廣橋清司氏と栗本興治氏が登壇した。
ライトオンは07年8月期の売上高1066億円、営業利益58億円をピークに落ち込みに歯止めがかからず、24年8月期の最終損益も6期連続の赤字で終わった。MDなどのテコ入れを図ったものの効果は出ない。他社がコロナ禍から回復する中、24年8月期は既存店売上高が13.0%減、客数に至っては17.1%減だった。客離れで在庫が膨らみ、値引きが増える悪循環に陥り、荒利益率は8.3ポイントも低下した。創業者・藤原政博氏の長男で20年に就任した藤原社長は「当社単独での事業継続は困難」と苦しい胸の内を明かした。
経緯としては23年2月に金融機関から他社とのアライアンス(提携)を要請され、同業を含めた複数社に打診を始めた。ワールドとは24年2月から協議に乗り出し、業績悪化がさらに深刻になった6月中旬に事業再生支援を前提としたアライアンスを正式に依頼したという。
利益を出せる事業規模に縮小
5カ年の中計のうち最初の2年間は販管費の削減を徹底する。全国340店舗のうち具体的な数は明かさないものの「不採算店舗の大規模な退店」(同社)を断行する。早期退職は募らないが、人員削減も実施する。ワールドグループへの異動も検討する。茨城県のつくば本部を閉鎖し、東京の新オフィスに人員を集約する。
25年8月期予想は売上高が前期比27.6%減の281億円、営業損益が15億円の赤字(前期は13億円)。事業規模を大幅に縮小させ、早期に利益が出せる事業構造に転換する。「希望的観測や努力目標は排除」(大友氏)した上で既存店売上高も13.7%減と低く見積り、採算に合わない値引き販売を抑制する。
2年間で構造改革にめどをつけ、PB(プライベートブランド)の充実に本腰を入れる。現在、PBとNB(ナショナルブランド)の商品構成は35:65だが、これを逆転させる。ワールドの生産工場や原材料調達先を利用し、スケールメリットによって仕入れコストを下げる。
ただジーンズカジュアル専門店という業態自体がダウントレンドになる中、再建は容易でない。中計の最終年度も売上高は254億円であり、前期に比べて35%減。売上規模を追わず、着実に利益を出す方向性を鮮明にする。11月に社長に就任する予定の大峯氏は「ライトオンのデニム文化は尊重しつつ、一本足打法は時代にあった形に見直す必要がある」と述べた。