マッシュホールディングス(以下、マッシュ)と伊藤忠商事はこのほど、米バッグブランド「レスポートサック(LESPORTSAC)」の国内販売会社であるレスポートサックジャパン(LSJ)の全株式を共同取得した。マッシュHDが株式の過半(51%)を保有し、LSJは同社の連結子会社となる。株式取得は9月27日付で完了し、同日付でマッシュHD執行役員経営企画部 改革推進室長の川島辰吾氏がLSJ新社長に就いた。
「レスポートサック」は、伊藤忠商事が2006年から全世界における商標権を保有している。日本では現在百貨店を中心に70店舗を展開し、主力商品はバッグやポーチで、顧客層は30代以上が中心。これまではサプライチェーンの川上(素材調達や生産管理など)を伊藤忠が、同社と資本関係を持たないLSJが川下(店舗展開や販売)を担ってきた。
マッシュの店舗運営力と企画力を活用
MDや店舗運営に長けたマッシュと組み、かつ生産から流通まで一気通貫の事業運営によるシナジーを狙う。マッシュの主販路であるファッションビルやSCへの展開、アパレルを含めたライセンス商品によるMD増強、会員へのクロスセルにより、同社の主要顧客である20〜30代女性の裾野拡大を目指す。
「バブアー」に続く成功事例に
マッシュは近年、他社との提携やライセンス契約などを通じて、海外ブランドを国内展開するビジネスにチャンスを見出している。自社でゼロからブランドを立ち上げるよりも資金や時間などが少なく済むメリットがあり、軌道に乗りさえすればスピーディーな事業成長が可能となる。その好例が2022年から展開する「バブアー(BARBOUR)」だ。
同ブランドは伊藤忠商事がブランドの独占輸入販売権を保有し、マッシュの100%子会社バブアー パートナーズ ジャパンが国内で店舗展開・販売するという座組で国内ビジネスをスタートした。百貨店だけでなくルミネ横浜やルクア大阪などのファッションビル、代官山に旗艦店を出店。同ブランドのシグニチャーであるオイルドジャケットを使ったジェンダーレスなコーディネート提案やブランド間協業のほか、レインウエア、Tシャツなどの軽衣料品、雑貨などの拡充により、女性客の取り込みに成功している。
伊藤忠が「レスポートサック」の事業パートナーにマッシュを選んだ理由に、「バブアー」の好調が背景にあるはずだ。「レスポートサック」でも「バブアー」を成功事例に、マッシュに新たなブランド像の構築を期待する。
マッシュとしては初のバッグブランド運営
中長期的な売上・利益目標は非開示としているが、コロナ禍以降(21年〜)の日本事業の業績は右肩上がりで推移しているという。近年は通勤にも使いやすいシンプルなデザインの商品投入、高感度セレクトショップやインフルエンサーとの協業企画により、若年層からの支持が拡大している。マッシュとしては初のバッグブランドの事業運営になるものの、強みの企画力で日本の顧客ニーズに刺さる商品提案をさらに強化し、将来的には、日本で企画した商品を海外市場向けに販売するなどの展望も描く。