好調アダストリアはメタバースにおいても攻めの姿勢だ。2022年10月にオリジナルアバター2体を発売後、「ハレ(HARE)」や「ジーナシス(JEANASIS)」など、リアルの商品の3Dモデルを定期的にリリース。リアルアパレルと比べると低単価だが、在庫リスクはない。130万円売るヒットアイテムも出し、サンリオとのコラボアイテムも展開するなど、着々と裾野を広げている。今年4月には3Dファッションアイテムに特化したマーケットプレイス「スタイモアー(STYMORE)」をオープン。バーチャルでもプラットフォーマーとしての可能性を探る。事業の進捗と手応えを、島田淳史ドットエスティメディア部長 メタバースプロジェクトマネジャーに聞いた。
WWD:マーケットプレイス「スタイモアー」の事業としての進捗は?
島田淳史ドットエスティメディア部長 メタバースプロジェクトマネジャー(以下、島田):まだベータ版であり、売り上げは正直それほど良くはない。すでに「ブース(BOOTH)」という大きなプラットフォームがあり、そこから「スタイモアー」にスイッチしてもらうのは明確なメリットがない限り、クリエイターにしてもユーザーにしても、なかなか難しいだろうということは分かっていた。僕らも「ブース」で並行して販売は続けており、現状では売り上げもそちらの方が大きい。
WWD:確かに「ブース」で特に不便を感じることはないように思う。では、「スタイモアー」ならではの明確なメリットをどう作っていく?
島田:物が多く売っていればお客さまも集まるし、お客さまが多く集まってれいば出店者も集まる。アダストリアの強みを活かして、クリエイター向けにやることと、一般ユーザー向けにやることをいろいろトライしているところだ。まず、出店したクリエイターに向けては、プロモーション活動だ。僕らは「スタイモアー」自体のプロモーションをするので、その際に一緒に商品紹介の後押しをしている。例えば「サンリオ バーチャルフェスティバル」に出展した際などに行った。
WWD:確かにアダストリアの宣伝力は、個人クリエイターにとって、非常に大きなサポートになるだろう。9月16日に公開された後期高齢者VTuber「メタばあちゃん」によるファッションショーへの衣装協力もその一環か?さまざまなクリエイターの名前がエンドロールに上がっていた。
島田:そうだ。いわゆるマーケットプレイスは、商品を掲載したらそれきりで、あとは自分でプロモーションしなければならないが、僕らは「スタイモアー」の認知度を上げる活動と共に、出店クリエイターやその商品も紹介していく。8月からテスト的に始めたのが記事コンテンツ。衣装をうまく着こなすための“改変”のコツなどの他に、古着風やロック系など、コーディネート紹介も上げ始めている。アダストリアのアイテムだけではなく、いろいろなクリエイターのアイテムも取り入れて、普通のリアルアパレルと同じくコーディネート提案をしている。今後一部のユーザーにも記事投稿を開放していくつもりだ。
WWD:それはファッションに特化したマーケットプレイスとして大きな特徴になりそうだ。クリエイターにとってのメリットも大きいだろう。ユーザーのメリット作りについてはどうか?
島田:まずは限定の商品。9月にサンリオのクロミと「レピピアルマリオ(REPIPI ARMARIO)」のコラボアイテム(6点セット2800円)を「スタイモアー」限定で販売したところ、順調に売れている。こうした「他では買えないもの」を増やしていく。サンリオの知名度とキャラクター、つまりIP(知的財産)の力は、1つの起爆剤になっている。
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