LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は10月11日、傘下ブランド「フェンディ(FENDI)」のオートクチュールおよびウィメンズのプレタポルテを手掛けるキム・ジョーンズ(Kim Jones)=アーティスティック・ディレクターの退任を発表した。業界関係者の間ではピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)前「ヴァレンティノ(VALENTINO)」クリエイティブ・ディレクターと交渉中という噂もあるが、現時点では後任は未定。新たな体制は、しかるべき時期に発表されるという。なお、ジョーンズは、2018年から務める「ディオール(DIOR)」メンズ・アーティスティック・ディレクター職に専念する。
ジョーンズは、ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校を卒業後、自身のブランドを設立。その後、「ダンヒル(DUNHIL)」と「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズを経て、「ディオール」のメンズを手掛ける傍ら、19年に死去したカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)の後任として20年9月に同職に就任した。初めてウィメンズを本格的に手掛けることになった彼は4年間の在任中、メンズウエアとアクセサリーを率いるシルヴィア・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)や彼女の娘でありジュエリーを手掛けるデルフィナ・デレトレズ・フェンディ(Delfina Delettrez Fendi)と密にコミュニケーションをとりながら、ドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)やマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、ステファノ・ピラーティ(Stefano Pilati)といった他のデザイナーとのコラボレーションや、ファーだけでない本格的なオートクチュールの制作などで、ブランドに貢献。話題を作るだけでなく、商業的成功をもたらした。
ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼CEOは、ジョーンズを「4年間にわたり『フェンディ』にユニークで多文化的なビジョンをもたらした、才能溢れるデザイナーだ」と称賛。「彼の貢献に感謝するとともに、『ディオール』メンズで彼のクリエイティビティーを見続けることを楽しみにしている」と話した。
また、LVMHは声明の中で、「キム・ジョーンズは、『フェンディ』の歴史的遺産にモダンで異文化的な美学をシームレスに融合させ、ブランドのクリエイティブなレガシーに大きく貢献した。彼の指揮の下、『フェンディ』のイタリアらしいコードをアップデートし続けるファッションへの包括的かつ革新的なアプローチによって、メゾンのプレタポルテとクチュールのコレクションは刷新された。4年間を通して、ジョーンズの仕事は完全に情熱とクリエイティビティーに導かれていた」と述べた。
拍車がかかるクリエイティブ・ディレクターのシャッフル
ジョーンズの退任により、また注目ブランドのクリエイティブ・ディレクター(またはアーティスティック・ディレクター)の座が空席になり、ラグジュアリー消費の鈍化と消費者の警戒心に悩む業界を揺るがすシャッフルに拍車がかかることになる。
業界関係者によると、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」のジョン・ガリアーノ(John Galliano)、「ロエベ(LOEWE)」のジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)、「ジル サンダー(JIL SANDER)」のルーシ・メイヤー(Lucie Meier)とルーク・メイヤー(Luke Meier)の雇用契約は、年内もしくは2025年初頭に満期を迎えるという。そして現在、「シャネル(CHANEL)」と「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)、そして毎シーズン異なるゲストデザイナーを迎えている「ジャンポール ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」も、クリエイションを率いるディレクターは不在だ。