クラシックな彫像が並ぶボザール美術学校の大講堂で発表された「ランバン」は、今春に迎えたアルベール・エルバス就任10周年を経て、新たな一歩を踏み出したコレクションとなった。デビュー以来、“インダストリアル・クチュール“というコンセプトを貫いてきたアルベールが、今シーズンの作品で表現したのは、凡庸なミニマリズムとは一線を画す、非構築的なフォルムによる新たなクラシシズムの提案。肩ラインを張り出したボックスシルエットや、アシンメトリックなフォルム、着物から発想した帯ベルトや折り紙のようなフォールディング・スカート。アルベールによれば、「19世紀末にフランスの芸術家たちが影響されたジャポニズムのイメージということだが、単に日本的なモチーフ使いというレベルを超えて、新たな素材開発とパターンの探究、精緻なアトリエワークが集積したコレクション作品は、「ランバン」の新たな10年を示唆する完成度の高さを誇っている。
コレクション中盤には、会場にある彫像を模したようなヌードプリントのドレスが登場。「女性は皆、スターのような気分でいたいもの。誰も壁の花にはなりたくないだろうからね」と語るアルベールの茶目っ気が垣間見られる。シンプルでありながら計算されたプロポーション・バランス、白黒モノトーンのコントラスト、メゾンアイコンのひとつである名香「アルページュを模したイヴニング用バッグなど、新境地に挑戦するアルベールが描く静謐なエレガンスが凝縮されたコレクションとなった。