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特集 パリ・コレクション2025年春夏

2025年春夏パリコレ総論 装飾主義の復活とレガシーの継承で異次元の世界に突入

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2025年春夏パリコレ総論 装飾主義の復活とレガシーの継承で異次元の世界に突入

遺産とは何か?そして、その遺産を現代的にどう表現し、本質を失わないまま増幅させながら継承するのか?歴史あるメゾンが勢ぞろいするパリの2025年春夏コレクションは、コアバリューに集中し、復活した装飾主義の力を借りながら、それを圧倒的な力で誇示するかのようなクリエイションが出そろった。才あるデザイナーの想像力の賜物であり、長い年月をかけて知識と技術を培った職人技の集大成であり、二極化が進む社会における富裕層を狙った戦略であり、こうしたブランディングの結果でもあるクリエイションは、異次元の世界に突入。K-POPセレブのパパラッチなどで刹那に消費されるバズを振りまかないと、一般人には縁遠いものになりつつあることには不安を覚える。(この記事は「WWDJAPAN」2024年10月14日号からの抜粋です)

ブランドの遺産を定義し、現代的に表現しながらその価値を増幅させるには、才能と同時にキャリアや“中の人”とのコミュニケーション、そして実際目で見て、手に取れるアーカイブの存在が欠かせない。ゆえにクリエイティブのトップに就任して間もないデザイナーは、新たな風を吹き込むチャンスを有している一方で、大きなビハインドを背負っているとも言える。その意味において高く評価すべきは、共に2シーズン目を迎えた「クロエ(CHLOE)」のシェミナ・カマリ(Chemena Kamali)と、「マックイーン(McQUEEN)」のショーン・マクギアー(Sean McGirr)、そして3シーズン目となる「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」のステファノ・ガリーチ(Stefano Gallici)だ。

軽やかなフェミニニティー
直感的にカワイイ「クロエ」

「クロエ」を手掛けるシェミナは、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代にはデザイナー、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)時代にはデザイン・ディレクターとして「クロエ」に携わった人物だ。創業デザイナーのギャビー・アギョン(Gaby Aghion)、そして一時代を築いたカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)に思いをはせながら、前デザイナーが失ってしまったエモーショナルなフェミニニティーを再興し、デビューシーズンの2024-25年秋冬から高い評価を獲得。フィービーやクレアによるカワイイ「クロエ」時代を知るバイヤーらを安堵させた。

今シーズンも、モスリンをたっぷり使うことで生み出すフリルやラッフル、ペプラム、夏の日差しを浴びて色あせたような優しいカラーパレット、快活なミニ丈、そして感情や直感を信じる精神性で、開放感たっぷりの夏のリゾートスタイルを描いた。インスピレーションの源を貼り付けたムードボードには、カール時代の1976〜78年「クロエ」春夏コレクション。コットンポプリンの白いパフスリーブのワンピースや、同じく純白のレースで作ったコンパクトなTシャツやキュロット姿のモデルの写真が並んでいる。彼女たちが手に取ったり、背伸びしたりでスカートやエンジェルスリーブのトップスを楽しむ一瞬を捉えた写真だ。シェミナは「クロエ」のデザインコードはもちろん、こうしたデザインがもたらす情緒や直感まで重視し、45年強を経た現代によみがえらせた。軽やかなフェミニニティーは、ジャケットにさえ及んでいる。素材や色、丈の長さを変えて何度も提案したアウターは、「シルクブラウスなどの『クロエ』らしさを、ジャケットで表現したらどうなるか?と考え、挑戦したもの」。肩下のヨークにギャザーを寄せ、ボリュームたっぷりの袖をあしらったジャケットは、アウターといえばペプラム裾のケープや同じくヨークをペプラムにアレンジしたトレンチコートのイメージが強い「クロエ」にとって、新しいアイコンになるだろう。

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