毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年10月14日号からの抜粋です)
村上:2025年春夏のパリコレ取材で一番印象に残ったのは、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)による「ヴァレンティノ(VALENTINO)」が案外いい!と思えたこと(笑)。正直「グッチ(GUCCI)」では終盤、マンネリ感が否めず「おなかいっぱい」という人も多かった印象ですが、今シーズンの“トレンドとしてのクワイエット・ラグジュアリー終焉”の流れにもマッチしていました。
藪野:誰が見てもミケーレ作と分かるコレクションでしたね。展示会も会場の内装は以前と同じなのに、超ラグジュアリーなビンテージショップのような雰囲気を感じました。
村上:ミケーレは解き放たれた感がありましたよね。やはり創業者がクチュリエであることが大きいのかも。「グッチ」ではロゴやホースビットといったアイコンに着想せざるを得ませんでしたが、「ヴァレンティノ」はスタイル。1980年代の「ヴァレンティノ」そのまんま!というルックもあり、レガシーへのリスペクトを感じました。今シーズンは、直感的カワイイの「クロエ(CHLOE)」や強くも脆い「マックイーン(McQUEEN)」など、主張あるラグジュアリーの流れを感じました。
新しさを生むのはデザイナーの探求心
藪野:「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のデムナは1年前、ショーのバックステージで「完璧かつ洗練された、ベージュのアンゴラで作られたような世界を信じていない」と語り、“クワイエット・ラグジュアリー”は長続きしないだろうと予想していたのですが、まさにその通り。「ザ・ロウ(THE ROW)」や「エルメス(HERMES)」のようにもともとそういうスタイルをアイデンティティーとして持っているところは変わらず魅力的でしたが、今季は“自分たちのやるべきこと”を追求するブランドが光りました。
村上:「バレンシアガ」は、創業者のスタイルを一番上手かつ斬新にモダナイズできているブランドですね。ニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)による「クレージュ(COURREGES)」も一目で「クレージュ」と分かるものでありながらフレッシュですし、ステファノ・ガリーチ(Stefano Gallici)による「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」も創業者の詩的で儚いクリエイションを大事にしながらストリートのムードを加え、新たなファンを獲得しそうです。
藪野:ブランドのアイデンティティーを大切にしながらも、新しさを生み出すためにはデザイナーの探求心が欠かせないですね。そういう意味で、「バレンシアガ」や「クレージュ」に加え、毎回驚きをもたらしてくれる「ロエベ(LOEWE)」と「サカイ(SACAI)」はスゴいと思いました。