2009年から続く「WWDBEAUTY」のベストコスメ特集では、バイヤーのアンケートをもとに本当に売れた商品を表彰する。連載「ベスコス歴代名鑑」では、15年以上続く本特集の中でも常にランキングに入賞する“傑作”をピックアップ。時代を超えて愛される理由や商品の魅力について、美容ジャーナリストの加藤智一が深掘りする。今回はポーラの美容液“リンクルショット メディカル セラム”にフォーカス。
日本初、シワを改善する医薬部外品として
2017年にデビュー
日本で初めてシワを改善する医薬部外品として、2017年に発売されたポーラの“リンクルショット メディカル セラム”。シワのできる原因を突き止め、それを抑制する成分「ニールワン®」を配合した美容液だ。ただ、この1本を発売するのに、実に20年以上の歳月が費やされていることは知られていない。化粧品でシワは改善できるという信念のもと、表皮性と真皮性のシワのうち、真皮性のシワができる仕組みの解明に着手。そして、有効成分の選定や製剤化への研究、さらには安全性の確認・安定性の確保、厚生労働省(以下、厚労省)への審査申請など数十人に及ぶ研究者たちがそれぞれの課題をクリアしたことで、ようやく日の目を見た商品だ。
開発は2002年から
数多くのハードルを乗り越え商品化
そもそもポーラがシワ改善医薬部外品の開発を始めたのは02年のこと。最高峰ブランド「B.A」の商品開発がきっかけだった。当時は業界内でシワに関する共通ルールがなかったことから、行政にシワの改善効果を訴求することができなかった。そこで、日本香粧品学会で、皮膚科医や化粧品業界の研究者が客観性のあるシワ評価法の確立に取り組むことに。その結果、06年にシワグレード標準を含むシワ評価のためのガイドラインが策定され、効果を科学的に証明する道が開けた。
その後、2009年にシワを改善する成分、「ニールワン®」の開発に成功。厚労省に医薬部外品のシワ改善有効成分として申請したものの、時期が悪く、さまざまなハードルが発生。厚労省から「ニールワン®」にさらなる安全性・実証データが求められるようになったことで、審査に7年を費やした末、16年7月にようやく承認。17年、ついに“リンクルショット メディカル セラム”として発売された。
華々しい登場で予約殺到
全社を挙げて取り組んだ一大プロジェクト。その華々しい登場感を演出すべく、発売日は17年元日に設定。テレビCMや雑誌・ウェブ広告はもちろん、新聞では中央4紙、地方紙への全面広告、東京、梅田、銀座などの主要駅で交通広告や電車広告ジャックを行い、メディア横断的に過去最大のプロモーションを繰り広げた。
その結果、“リンクルショット メディカル セラム”発売月はもはや予約さえ受注できないほど、各店舗やECに予約が殺到。百貨店には連日、購入希望者が列になり、1人1本の個数制限を設定するほどの熱狂が続き、発売1カ月で販売総数が約25万本、売り上げ約36億円を記録した。
商品レビューでは「まるでパテのようなとどまるテクスチャーがシワに入り込む」、「家族から肌がきれいになったと褒められる」と有効成分ならではの効果感が高評価を獲得。リピート購入も増え、初年度の販売個数は約94万本、売り上げは約130億円までに達し、成功を収めた。
ベストコスメ198冠、販売本数は約450万本
その後もシワ改善美容液の先駆けとして、常に業界をリード。ベストコスメ獲得数も198冠(24年10月時点)にのぼり、24年6月末現在では販売本数は約450万本、体験人数は約178万人という驚異的な売り上げを続けている。
そして、25年には新製品として、有効成分「ニールワン®」を部分使いではなく、全顔に使う“リンクルショット メディカル セラム デュオ”を発売。シワ改善医薬部外品としては、国内初となる2剤を自分で混合して使う美容液を開発している。こちらの発売日は、17年と同様に、25年の元日に設定。4年ぶりとなる待望の新作で、再び革新の一歩を踏み出す。