ファッション

90歳を迎えたジョルジオ・アルマーニが見つめる未来 思い出の地NYに12階建て複合ビルをオープン

ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」は10月17日(現地時間)、ニューヨークのマディソン・アベニュー旗艦店を全面改装し、新たな複合ビルをオープンした。12階建てビルの総面積は9000㎡。「ジョルジオ アルマーニ」やホームコレクション「アルマーニ / カーザ(ARMANI/CASA)」などの最新コレクションを取り扱うほか、高級マンションのジョルジオ アルマーニ レジデンス(GIORGIO ARMANI RESIDENCE)、そして11月に開店するレストラン「アルマーニ / リストランテ(ARMANI / RISTORANTE)」を併設する。

創業デザイナーのジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)は昨年7月に90歳となり、来年はブランド設立50周年を迎える。人生の大きな節目が続く中、ニューヨークの新たなランドマークとなる同旗艦店には格別な思いを抱いているという。

40年代アールデコに着想した新複合ビル

アッパーイーストサイドに位置する新たなビルの外観は、ニューヨークの歴史的な景観に溶け込むよう、1930〜40年代のアールデコ様式からインスピレーションを得た。2フロアのブティックも、同じく40年代の美学を思わせるテーマ別の広々とした空間となっている。1階はウィメンズのウエアやアクセサリー、アイウエアに加え、「アルマーニ ビューティ(ARMANI BEAUTY)」や「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」のフレグランス、「アルマーニ / ドルチ(ARMANI/DOLCI)」のアイテムが並ぶ。2階は、ジュエリーやイヴニングウエア、メンズのウエアとアクセサリーをそろえるだけでなく、ウィメンズのメード・トゥ・オーダー、メンズのメード・トゥ・メジャーのサービスを提供する。

3階は、「アルマーニ / カーザ」をラインアップ。278㎡の広々としたオープンスペースは、スライド式の壁で空間を仕切り、家具や小物、壁紙、ファブリックなどのインテリアコレクションを展示する。専用のエントランスから入店できる「アルマーニ / リストランテ」は、1階から中2階まであり、バーカウンターや40人収容できるプライベートルームを完備。イタリア料理の伝統とニューヨークらしさを融合したメニューを提供する。アルマーニが監修したカスタマイズ可能なレジデンスは、共同スペースを含む4〜12階を占め、すべて売却済みだ。

オープン当日の夜には、2025年春夏コレクションのファッションショーを市内のパーク・アヴェニュー・アーモリーで650人のゲストを招き、盛大に開催。ニューヨークでのショーは、13年の“ワン ナイト オンリー(ONE NIGHT ONLY)”というイベント以来になる。また、アルマーニは5番街にある高級百貨店バーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)で自身の著書「Per Amore」のサイン会を実施。同店は、80年代に「ジョルジオ アルマーニ」のウィメンズを初めて取り扱った店舗という縁のある場所でもある。今回のニューヨークでのイベントが個人的にも大きな意味を持つというアルマーニの思いについて聞いた。

ジョルジオ・アルマーニとニューヨーク

WWD:約10年ぶりのニューヨークの感想は?

ジョルジオ・アルマーニ「ジョルジオ アルマーニ」創業デザイナー(以下、アルマーニ):今回は私の90歳、そして創業50周年という2つの節目と重なることもあり、前回のイベントで訪れた時以上に個人的な思い入れがある。今回は青春時代に魅了された、美学の詰まったさまざまな映画を思い起こし、それらを追体験するように過ごしているよ。そうした美学はファッションからライフスタイル、そしてレジデンスまで継承することができた。特にレジデンスは誇らしく思っている。今回の旅は、私の叙事詩のようなものだが、全て“アルマーニ・スタイル”だ。落ち着いていて、大袈裟ではない。

WWD:マイアミでは建築家のシーザー・ペリ(Cesar Pelli)の設計による60階建てのタワーにある260戸のインテリアを「アルマーニ / カーザ」が手掛けるなどしているが、今回自身が監修したニューヨークのレジデンスとの共通点などはあるか?

アルマーニ:“アルマーニ・スタイル”のすばらしさは、その適応性にある。人や環境、都市に適応させながらも私のスタイルであることには変わりない。新レジデンスには、“アルマーニ・スタイル”でありながら、グランドセントラル駅の雰囲気や40年代のモノクロ映画のような壮大さがある。このタイムレスなスタイルを意識しつつ、現代の暮らしのために再解釈している。

WWD:「アルマーニ / カーザ」はアール・デコとオリエンタル的な要素への着想に忠実だが、近年はどのように進化を遂げているか。

アルマーニ:私の仕事すべてがそうであるように、カーザ部門も時代の変化や人々のニーズに応えながら、強いスタイルのアイデンティティーを保ちつつ進化してきた。エレガンスを追求し続けた初期の厳格なデザインから、私独自のタッチを保ちつつ、より幅広い視野で表現することに移行していった。この進化は私のファッションの遍歴も映し出している。

WWD:ニューヨークでの一番の思い出は?

アルマーニ:ニューヨークはとても活気があり、常に変化し続ける街。訪れるたびに再訪の心地良さと新しい発見を同時に感じる。だからどの旅にも大切な思い出がある。個人的には、群衆の中に紛れ込むロマンチックな概念も大切にしているよ。70年代後半に、ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)からの賞を受け取るために初めて訪れたニューヨークは、自分のキャリアの中で今でも忘れられない誇らしい瞬間の一つだ。

WWD:ニューヨークの好きなところ、変えるべきと思うところは?

アルマーニ:好きなところは、さまざまな人種やスピリッツ、カルチャーが混ざり合う、正真正銘の“メルティングポット”であることだ。そして、常に現代性を体現する移り変わりの早い都市であるが、他の大都市と同様に、社会的不平等は大きな問題であり、近年は悪化していると聞いている。その変化や状況について、自分の目で見極めたい。

WWD:ニューヨークで所有するマンションも改装した?

アルマーニ:所有するマンションの隣に、セントラルパークを見渡せる歴史的な建物を購入した。その建物と建築様式を考慮しながら増築することにした。

アメリカと中国のビジネスの現在そして未来

WWD:23年度の売上高は24億4000万ユーロ(約3952億円)で、南北アメリカ市場はその21%を占めている。まだ成長の余地があると考えているか。

アルマーニ:成長の余地は常にあると考えている。しかし、私は本業でのゆっくりとした発展を望む。今日のファッション産業の問題の一つは、常にアグレッシブ過ぎる勢いで2ケタ成長を追い求めていることだ。崩壊のリスクなしには、そうした急激な成長ペースを維持していくことはできない。そのため、私たちを慎重に物事を進めることにしている。オファーを吟味し、小売業者と協力し、特別なプロジェクトを作り上げていく。初の協業となった「キス(KITH)」とのコラボレーションは、そうしたものの一つだ。

WWD:アメリカ国内で今後大きな店舗のオープンを予定しているか。

アルマーニ:ニューヨークのオープンは、私たちのグループにとって最も重要なものだ。そして今後は中南米でのレジデンスの展開に注力する。この分野では幅広いスタイルとビジネスの可能性があると期待している。

WWD:再編が続くアメリカの百貨店の状況について。今後、卸をどう見据えているか。

アルマーニ:市況は良くないが、私たちにとって百貨店は消費者にリーチする重要な手段であることは変わりない。バーグドルフ・グッドマンも、残念な結果となったバーニーズ ニューヨーク(BARNEY’S NEW YORK)もそうだ。米国の広さを考えると直営店は難しい場合も多いので、卸は非常に重要と考えている。

WWD:中国の調子はどうか。

アルマーニ:回復の兆しは見えてきている。大規模なリニューアルオープンの計画もあるが、かつてのような爆発的な成長ではなく、本業での自然な成長であることが大切だ。より親近感の持てるスペースやショップでのプロジェクトに興味がある。

WWD:多くのラグジュアリーブランドが大幅な値上げをする中で、「ジョルジオ アルマーニ」はしていない。その真意は?

アルマーニ:私は常に長期的な選択を見据えていて、それは私のビジネス戦略でもある。急激な値上げは短期的には収益を増やすが、長期的には顧客を遠ざけることになる。それは私のアプローチの仕方ではない。極端に高い価格も、プレタポルテにはふさわしくない。そうなるとオートクチュールと同じ価格帯になってしまうが、それぞれ顧客層が異なる。

WWD:来年で創業50周年を迎えるが、今の思いは。

アルマーニ:どのように祝うかはまだ考え中だが、重要な節目だからといって私は派手なことをする人間ではない。さりげないものになるだろう。まずはニューヨークの成功に集中しているよ。

WWD:自伝で「未来に役立つメソッド」と「具体的な事実に基づいて行動することの重要性」を強調している。どのような未来を見据えているか。

アルマーニ:当社の将来は有望だ。私とともに長年働き、私の価値観やアプローチに共感してくれる有能な人々に(当社を)委ねていく。それは自然な進化になるだろう。時代と歩調を合わせ、進化することは当社のDNAに組み込まれており、それこそが今日的であり続けるカギだと私は考えている。

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