ファッション

元「テンダーパーソン」のビアンカが新ブランド 「絶対に見返してやる」

「テンダーパーソン(TENDERPERSON)」元デザイナーのメンドンサ・ビアンカ・サユリ(以下、ビアンカ=デザイナー)は、新ブランド「リブリオ メンドンサ(LIBRIO MENDONCA)」を2025年春夏シーズンに立ち上げた。ファーストコレクションは30型で、価格帯はトップス2万5000〜5万5000円、アウター8万〜20万円、ボトムス3万3000〜9万円、雑貨小物が6000〜4万円。デザイナー自身の明るく人懐こい性格を表すように、カラフルな色使いとポップなムードが持ち味だ。

ビアンカ=デザイナーは、文化服装学院に在学中の2014年、同級生のヤシゲユウト=デザイナーと「テンダーパーソン」を立ち上げた。20年には初の直営店を東京・南青山にオープンし(現在は閉店)、21年に初のランウエイショーを実施、22年に「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」を受賞した。ブランドとして知名度を徐々に広げてきた矢先、ビアンカ=デザイナーは「一身上の都合」で今年6月に同ブランドからの退社を発表。その後わずか3カ月という期間で自身のブランド「リブリオ メンドンサ」立ち上げから制作までを行った。彼女は何を思い、次のステージへ進むことを決めたのか。

WWD:なぜ「テンダーパーソン」を退社したのか。

ビアンカ=デザイナー:これまでがむしゃらに走りすぎてしまっていたからです。自分はキャリアとプライベートのバランスをどうしていきたいのか、自分らしく生きるにはどうすべきか、自分は何がしたいのか……。そう葛藤するようになるにつれて、「中途半端な状態で服作りはすべきでないし、そんな作り手の服はお客さまにとって失礼になるかもしれない」と考えたんです。2014年に「テンダーパーソン」を始めてから10年が経ったことと、私が30歳になったことというキリの良さも後押しになりました。

WWD:新ブランドを立ち上げた経緯は?

ビアンカ=デザイナー:「テンダーパーソン」を辞めた後、実は一般企業に就職しようとしていたんです。自分で何かを作りたいという考えもそこまで強くなかったし、企業やブランドから、デザインチームのデザイナーとしてのオファーもいただいたので。でも周囲からは「『テンダーパーソン』の肩書きがないビアンカちゃんなんて価値がないよ」という厳しい言葉をもらったんです。私は負けず嫌いな性格なので、逆に「なんかやってやろう!」「自分の進みたい道に挑もう」という気持ちがメラメラと湧いてきてしまった。そこで自分のブランドを始めることにしました。

WWD:「リブリオ メンドンサ」はどのようなブランド?

ビアンカ=デザイナー:私が日々の生活の中で感じたことを、自由な表現でドキュメンタリーのように服に落とし込むブランドです。何かに縛られるのが好きじゃないので、年齢や人種、ジェンダーにとらわれないユニセックスブランドにしました。ファッションが好きで楽しんでいる人に着てほしいです。プリントやディテールを通して、アイテムにメッセージ性を加えることが得意なので、着た人を強く、ハッピーにするお守りのような服を届けます。

私のルーツはブラジルにあります。だからブランド名の“リブリオ”は、私の好きな花であるユリを意味するポルトガル語“LIRIO”に、ビアンカのBを加えた造語にしました。与えられた自由ではなく、自ら自由を掴み取るという気概も踏まえて、“LIBERTY(自由)”というダブルミーニングも込めています。“メンドンサ”は私のファミリーネームです。

WWD:ファーストシーズンの特徴は?

ビアンカ=デザイナー:シーズンタイトルは、ポルトガル語で“反逆者”を意味する「リベルテ」です。ブランドを始める前に人から言われた悔しい言葉に対して、「見返してやる」と思ったことが由来です。

ただ、ブランドを始めると決意した当初は、具体的にどんなことをするべきか固まっておらず、モヤモヤしていました。でも、ふとその感情が、幼少期に歯医者に行く前の嫌な感覚に似ていると気づいたんです。歯医者の予約の1週間前から、カレンダーを見ては鳥肌を立てていたことや、待合室で憂鬱になっていたことを思い出し、コレクションで表現しています。歯のレントゲン写真のようなモチーフをプリントしたブルゾンや、鳥肌に見立てたポンポンを施したシャツ、締め付けられるような心をギャザーで表したストライプシャツなどが代表例です。今の自分にとって洋服を作ることは、歯医者に行くことのように“治療”の側面があります。

WWD:自分の経験をかなりストレートに服で表現している。

ビアンカ=デザイナー:自分の知人や友人も着想源になっています。今付き合っているパートナーがLINEで全く絵文字を使ってくれないので、そのヤキモキした気持ちを、絵文字モチーフのニットをつなげたカーディガンで訴えたり、毎日シワだらけの服を着ている友人をモデルに、凹凸のある生地でTシャツを作ったり。

WWD:6月に「テンダーパーソン」を退社してから、わずか3カ月ほどでのコレクション発表だ。

ビアンカ=デザイナー:期間を空けてしまったら、自分の気持ちが盛り下がってしまうように感じたからです。「こんな過酷なスケジュールをこなせた自分、好き!」と自信を持つためにも、急いで仕上げました。ただ、周囲の人たちが快く協力してくれたことが大きいです。工場の人も「手伝うからなんでも言ってね」と応援してくれたり、知人が展示会の1カ月前に頼んだのPRを引き受けてくれたり。なんだか泣けてきますね。

WWD:今後の目標は?

ビアンカ=デザイナー:まずは卸販売中心でブランドの土台を作ります。都内から地方まで販路を獲得できたので、今後はそれらを安定させるほか、海外の卸先も目指したいです。ファッションショーでブランドの世界観を披露することです。前のブランドの時に、パリで展示会を開いたことがとても刺激になったので、「リブリオ メンドンサ」でもそこを目指したい。あとはいつか城を建てるのが夢です(笑)。

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