アシックス(ASICS)において、ファッションやライフスタイルとしてのスニーカーを扱うのがスポーツスタイル(以下、SPS)カテゴリーだ。SPSの23年12月期売上高は前期比36.3%増の592億円、営業利益は同87.5%増の120億円。24年12月期は、1〜6月で売上高459億円を突破し、通期で1000億円近くに達する見込み。部活や体育のイメージが強かったアシックスが、短期間でファッションスニーカー市場でも先頭集団の一員となれた理由は何なのか。鈴木豪 執行役員スポーツスタイル統括部長、上田隆之 同統括部デザイン部部長への取材を元に、4つのキーワードで掘り下げる。(この記事は「WWDJAPAN」2024年11月4日号からの抜粋です)
スポーツスタイルの基礎DATA
スポーツスタイル業績推移
スポーツスタイル地域別売上シェア
(23年12月期)
Keyword 01
組織再編&DX
SPSカテゴリーが今の組織形態になったのは、5年前の2019年のこと。それまで「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」のサブブランド的存在だったライフスタイル部門の“アシックスタイガー(ASICS TIGER)”のシューズと、ランニング部門のイージーランニングシューズを統合し、SPSカテゴリーとして再編した。それ以前は、企画、生産、販売のように機能ごとに細切れになっていた組織を、再編によってカテゴリーとして一気通貫体制に変更。スポーツメーカーの商品開発というと競技や種目を軸にしてきた時代が長いが、近年はファッションやライフスタイルシーンでもスポーツウエアの機能性や快適さが強く求められるようになっている。SPSには、そうした消費嗜好の変化に応えることが期待された。
再編前は、各国の販売子会社が自国で何をどれだけ売るか、次は何を作るかの主導権を握っていたという。販社によってシステムやデータの取り方も異なり、グローバルでの販売分析も難しかった。しかしIT業界出身の富永満之現社長COOが18年に入社し、DXを推進。本社も販社も工場も同一のデータで話ができるようになった。組織再編とデータの見える化で、企画やマーケティングの手法も変わった。各販社から上がってくる競合の好調品番などを企画会議の出発点にするのではなく、地域ごとの消費や潮流の分析にクリエイティブな視点を交ぜるように。既にある流れを捉えるのではなく、潮流の芽をつかむ姿勢に変わった。企画担当者以外もモデルごとのターゲットや届けるべき価値への理解が深まったことで、販促や営業面の精度も高まった。打ち出す商品や方向性がグローバルで統一されたことで、地域別に商品を組み立てていたころに比べるとSKUは約4割減。それは、SNSが発達し、ローカルトレンドよりも世界共通トレンドが支持されるようになった時代感とも合致している。
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