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現存する世界最古のジュエラー「メレリオ」 15代目が語るメゾンの歴史の継承と未来への覚悟

PROFILE: コーム・メレリオ / メレリオ インターナショナル・ビジネス・ディベロップメント・ディレクター

コーム・メレリオ / メレリオ インターナショナル・ビジネス・ディベロップメント・ディレクター
PROFILE: 1994年フランス生まれ。メレリオ家15代目。ISG経営大学院で経営学を学んだ後、カリフォルニア大学サンタバーバラ校でMBAを取得。メレリオでインターナショナル・ビジネス・デベロップメント・ディレクターとして指揮を取る PHOTO:SHUHEI SHINE

現存する世界最古のジュエラー「メレリオ(MELLERIO)」のコーム・メレリオ=メレリオ インターナショナル・ビジネス・デベロップメント・ディレクターがイベントために来日した。同ブランドは1613年にフランス・パリで創業。顧客には、マリー・アントワネット(Marie Antoinette)に始まり、ジョゼフィーヌ皇后(Joséphine de Beauharnais)やウジェニー皇后(Eugenie de Montijo)が名を連ねる王室御用達の宝石商としてフランスの歴史と共に歩んできた。4世紀以上を経ても創業一族が運営に携わる稀有なジュエラーであり、多くのジュエラーが軒を連ねるヴァンドーム広場界隈のラ・ペ通りに1815年に構えた店舗でジュエリーを生み出している。15代目当主であるメレリオ・ディレクターに話を聞いた。

最先端のジュエリーを4世紀以上にわたり提供

WWD:「メレリオ」はイタリアにルーツがあるが、創業のきっかけは?

コーム・メレリオ=メレリオ インターナショナル・ビジネス・デベロップメント・ディレクター(以下、メレリオ):先祖はフランス国境に近いイタリア北部の出身。1515年にフランスに渡り、1613年にフランスに嫁いだマリー・ド・メディシス(Marie de Medicis)王妃の子、ルイ13世の暗殺計画を未然に防いだ功績によりフランス国内で自由に商いをする特権を与えられ、王室御用達宝石商として歩み始めた。ルイ13世の戴冠式の王冠で使用された歴史的なダイヤモンドは「メレリオ」によるものだ。今でもそのモチーフは、メゾンのアイコンとして“リビエラ”コレクションや時計の文字盤に使用されている。イタリアの太陽やドルチェ・ビータというイメージとフランス・パリのシックな部分を融合した「メレリオ」だけが提案できる独自のスタイルのジュエリーを提供している。

WWD:「メレリオ」の一番の強みは?

メレリオ:現存する世界最古のジュエラーで創業家が経営を担っている点。4世紀以上の激動の歴史をその時代と共に歩んできたし、今後もそうしていく。われわれの看板には貴金属商、ビジュー、ジュエリーという表記がある。創業当時、ジュエリーはティアラなど権力の象徴であり、ビジューとは日常のおしゃれや侍女が楽しむ小さなジュエリーのことを指し、それら全てを制作していた。ラ・ペの店舗には50万点ものアーカイブ作品や台帳などがある。台帳を見れば、フランス革命直前もジュエリーを受注していたことがわかる。「メレリオ」は、その時代のコンテンポラリーを提案するジュエラーとしてモードの最先端を彩ってきた。

WWD:時代を彩ってきた象徴的なジュエリーとは?

メレリオ:18世紀にはアンティークカメオが流行り、当時マリー・アントワネットが侍女のためにオーダーしたジュエリーがある。それを買い戻したものがわれわれのアーカイブに残っている。19世紀、王政の崩壊後、1日に何度も着替えるのが貴族のファッションだった。ところが、フランス革命で貴族たちの財力が弱まり、装いに合わせてアレンジのできるジュエリーが生まれた。第二帝政時代には、ウジェニー皇后とナポレオン3世(NapoleonⅢ)の従妹がサロンを開き、ファッションやジュエリーを競うようになった。その時代を代表するジュエラーが「メレリオ」だった。このように、フランスにおけるジュエリーの歴史の最先端にいたのが「メレリオ」だ。

WWD:「メレリオ」にとってのコンテンポラリーとは?

メレリオ:グローバル化が進み、今ではファッショントレンドに時差はあまりない。だから、よりパーソナルな提案が重要だと考える。「メレリオ」では17~19世紀のスタイルへオマージュを寄せて現代風にアレンジしたジュエリーを提案している。 “ピエーリー”は19世紀のファッションを現代の装いにマッチするようにアップデートしたもので、“キャビネ ド キュリオジテ”は、さまざまなアイテムをパーソナライズして重ね付けするスタイルを提案。歴史のあるブランドだが、Tシャツやファーにハイジュエリーを合わせるなど、ビジュアルでもインパクトのあるコンテンポラリーな発信を行っている。

グランサンクで唯一の独立系ジュエラーとしての誇り

WWD:ビジネス戦略は?

メレリオ:昔から、権力を表すものであったジュエリーと、よりカジュアルなビジューがあったように、ハイジュエリーからエントリー価格のジュエリーまで、全ての価格帯でバランスの良いラインアップを提案する。また、ラグジュアリー=高額という概念になりがちだが、購入してもらえなければ意味がない。購入してもらえる価格で提供するのが大切だ。歴史に培われたクラフツマンシップと品質、「メレリオ」として永遠の価値を持ち続けるジュエリーを提供する。

WWD:15代当主として歴史をどのように継承して伝えていくか?

メレリオ:「メレリオ」をはじめ、「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」「ブシュロン(BOUCHERON)」「ショーメ(CHAUMET)」「モーブッサン(MAUBUSSIN)」から構成されるグランサンク(パリを代表する5大ジュエラー)のうち4社は全てグループ企業の傘下だが、「メレリオ」は独立企業だ。400 年以上、同族で経営してきて、将来的にも一族で役割を分担して質の高いジュエリーを生み出していく。そのためには、市場に飲み込まれない覚悟が必要だ。ラ・ペの店舗はアーカイブがあるだけでなく、そこでジュエリーを作り続けてきた場所。その空気感を守り続けるのが私の使命だ。「メレリオ」には、歴史とノウハウがあり、それを元に新しい世代に訴えかける魅力的なジュエラーにしたい。

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