「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を傘下に持つタペストリー(TAPESTRY)は11月14日、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」を擁するカプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)の買収契約を、双方の合意の上で正式に解除したことを発表した。
タペストリーは2023年8月、カプリを85億ドル(約1兆3000億円)で買収することに合意。24年末までに取引が完了する予定だったが、両社が保有するブランド間の競争がなくなることで独占状態になるとし、米連邦取引委員会(FTC)は本件を停止する仮処分を求めて4月に提訴した。9月9日に開廷した裁判では、“アクセシブル・ラグジュアリー(Accessible luxury)”市場の定義やその独占に関する懸念が大きな争点となり、ジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)=タペストリー最高経営責任者(CEO)やジョン・アイドル(John Idol)=カプリ会長兼CEOらをはじめとする多くの関係者が出廷。しかし、10月24日に米連邦地方裁判所がFTCの申し立てを認める判決を下したため、2社の合併は事実上の暗礁に乗り上げていた。
判決を受け、タペストリーは「買収の合意に基づく義務に則り、判決に対して上告する予定だ」との声明を発表していた。しかし、今回こうして正式に契約を解除したのは、「今後の法的手続きの結果が不確実であり、契約解除が可能となる最終期限の25年2月10日までに問題が解消される可能性が低いため」としている。
契約解除のニュースを受け、タペストリーの株価は14日、前日比12.8%高の57.82ドル(約8846円)を、カプリは同4.4%高の20.52ドル(約3139円)をつけた。
両社のCEOのコメント
クレヴォイセラCEOは、「当社は成長への道筋を常に複数持っており、今回の決定は今後の戦略を明確にしたものだ。好調だった第1四半期の業績を土台に迅速かつ大胆に行動し、本業での成長をさらに加速させていく。特徴的な傘下ブランド、機敏かつ適応力の高いプラットフォーム、情熱的なチーム、安定したキャッシュフローを有する当社は、引き続き強固な立場にある。素晴らしい未来に向けて、まずは追加の株主還元プログラムを実施する」と語った。その一環として、同社は20億ドル(約3060億円)相当の自社株買いを行うことや、配当金の維持および増配の可能性について明らかにした。
アイドル会長兼CEOは、「買収契約の解除に伴い、今後は当社および豊かなヘリテージを持つ傘下ブランドの将来にフォーカスする。過去18カ月の業績を踏まえ、成長軌道に戻るための複数の戦略を導入した。エキサイティングなコミュニケーション、消費者を引き付ける商品、オムニチャネルでの買い物体験を通じ、ブランドの魅力をいっそう高めていく」と述べた。
なお、同氏はアナリスト向けの説明会で、「株主価値をさらに高める機会があれば、慎重に検討したい」と発言。条件によっては、また事業売却の可能性があることを示唆した。