「無印良品」を運営する良品計画は、11月23日にスタートする清水智 新社長(現在は副社長)体制での経営戦略を発表した。3年後の27年8月期に、売上高に相当する営業収益で8800億円(24年8月期実績は6616億円)、営業利益790億円(同561億円)を目指す。堂前宣夫社長(23日に代表権のない会長に就任)による3年間の方向性を踏襲するが、堂前氏が21年の社長就任時に掲げた「30年8月期に営業収益3兆円、営業利益4500億円」という目標に関しては「将来的なポテンシャルはあるが、まずは営業収益1兆円、営業利益率10%を目指す」(清水氏)とした。
「堂前(現社長)は戦略立案に長けており、今後の経営においてもそこを担う。一方で私は実行力が強みであり、計画を着地させることが得意」と清水氏。堂前体制で成長スピードが増し、24年8月期は営業収益、利益の各段階で過去最高を達成している。「この3年間で一通りの仕組みや人材は整った。ここからは、戦略を誰よりも早く実行し成果を出していく。そのために、実行が得意な私が次期社長に指名されたと理解しているし、それができるという自信がある」と続ける。
27年8月期に向けて、「出店拡大」「商品開発体制強化」「重点カテゴリー強化」「OMO強化」などを継続する。出店では、国内は引き続き1980平方メートル規模の大型店を、地方の食品スーパー隣接地など生活圏に積極出店。海外は既存店の下げ止まりが見えた中国本土では不採算店の閉店と新規出店を同時に進め、東アジア、東南アジアで出店を継続する。コロナ禍中に大胆な事業整理を進めた欧米は旗艦店出店を模索するも、本格化するのは28年以降とする。27年8月期末の店舗数目標は1650店(24年8月期実績は1305店)。そこに向け、年間で国内60店、海外60店(うち30店は中国本土)の純増ペースを目指す。
商品開発体制強化では、日本だけでなく中国、東南アジアにも開発拠点を設けて、現地ニーズに即した商品開発を進める。現地の規制やサイズなどの問題で、海外では日本と同様の規模での品ぞろえができておらず、課題となっている。現時点で日本の品ぞろえに対する海外店の充足率は58%、これを26年に80%にまで高め、残りの20%は現地開発商品とする。
「“第二創業”を進化させる」
重点カテゴリーの強化では、衣料品・生活雑貨・食品で3000品目以上を取り扱い、さらには住宅や生鮮食品まで扱うといった「全方位型が無印らしさとして浸透している」としつつも、スキンケア商品などが好調なヘルスケア&ビューティ部門、衣料品では天然素材の機能性インナーなど、ポテンシャルの高いカテゴリーの開発を強化する。全方位型ではあり続けるが、注力カテゴリーでは「単品の力でも戦っていけるようにする」。
商品開発強化、重点カテゴリー強化を裏打ちするために、生産面も過去3年で改革を進めてきた。23年に三菱商事ファッションの一部を会社分割で承継し、衣料品生産を内製化、原価低減につなげている。現在、ベトナム、インド、インドネシア、カンボジア、上海、深圳で海外生産拠点が稼働しており、グローバルで商品を開発・生産していく体制構築を引き続き強める。OMO強化においては、ECと店頭など複数チャネルの在庫を一元化して機会損失を減らす。
新社長に就く清水氏は1974年生まれの50歳。96年に良品計画に入社し、以来店長、商品部、中国を中心とした海外事業管掌など、社内で複数の部門を経験してきた。「自分の業務スタンスとして一番のベースになっているのは店頭という現場。過去3年間で進めてきた“第二創業”を進化させ、世界でさらなる成長を目指す」と語った。