今後数年で欧州や米国の一部の州でアパレルに対して厳しい法規制が課されるようになる一方、間隙を縫うような形で「シーイン(SHEIN)」や「TEMU」といった超速のサプライチェーンと越境ECを組み合わせた企業が急成長している。一連の「越境EC」企業は数兆円を超える年商に達しており、すでにアパレル産業の一角を占めるまでになっている。産業構造が急激に変わる中で、サプライチェーンのDXは待ったなしだ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年11月18日号からの抜粋です)
国内外の有力IT&サプライヤーが入り乱れる
有力企業4社
エイブリィ・デニソン(AVERY DENNISON)
RFIDタグ
米国 設立:1935
アパレル用ラベル・下げ札とRFIDタグの世界最大手。2023年度の売上高は83億ドル(約1兆2699億円)。RFIDの供給と活用を通じ、在庫の精緻(ち)な管理や盗難防止、販売現場の負担軽減などを提唱。一部の大手では従来の下げ札に加え、服に縫い付けるタイプも開発。
セントリック・ソフトウエア(CENTRIC SOFTWARE)
PLMソフトウエア
米国 設立:2006
PLM(製品開発管理)の有力企業の一つ。LVMHやアシックス(ASICS〈グローバル〉)、PPIHなど1万8000ブランドが導入。多くの部門とサプライヤーの関わる、アパレル生産の中枢である製品開発の効率化を通じて、サプライチェーン全体を効率化。PLMの有力企業として他にレクトラ(LECTRA〈仏〉)、PTC(米国)がある。
CLOバーチャルファッション(CLO VIRTUAL FASHION)
3DアパレルCAD
韓国 設立:2009
3Dグラフィックと融合したアパレルCADの最右翼。服の風合いや体にぴったりのデザインを表現できるため、「バーチャルサンプル」やECサイトへの掲載も可能になる。高性能なグラフィックへの評価は高く、直近の資金調達では大人気ゲーム「フォートナイト(FORTNITE)」などを展開するエピックゲームズ(EPIC GAMES)から出資を受けた。
スタイレム瀧定大阪
テキスタイル
日本 設立:1864
老舗の繊維商社で、テキスタイルサプライヤーとしてはこの数十年にわたり、日本の最大手。早くからDXにも取り組んでおり、取り扱うテキスタイルの大半になる5000品番をフィジカルとデジタルデータ、両方そろえている。デジタルデータは3DCADなどにも転用可能。
サプライチェーン全体を見渡して、DXの主役になりそうな最右翼の一つがRFIDタグだ。値札やブランドタグの中に情報を書き込んだICタグを挟み込むことで、SKU(最小単位)での製品管理を可能にする。流通分野ではバーコード以来の大きなイノベーションであると同時に、すでに全世界の小売分野では約260億枚が流通しているほど普及している。RFIDタグの普及で最も大きな力を発している企業の一つが、米国のエイブリィ・デニソンだ。アパレル分野の下げ札のカテゴリーでは圧倒的な世界最大手で、世界でRFIDタグの普及を推し進めてきた。加藤順也エイブリィ・デニソンスマートラック・ジェネラル・マネージャーは、「RFIDタグを活用したDXはまだ始まったばかり。日本では棚卸しの短縮への使用が多いものの、世界的には盗難防止や非常にきめ細かな在庫管理、ブロックチェーンと連携させたトレーサビリティーまで幅広い分野で使われており、日本でも今後さらに活用が進むはずだ」と指摘する。
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