アパレル企業に特化したAIサービスが急拡大している。サービスを提供する側も大手繊維商社からスタートアップ、外資、老舗通販会社と多彩な顔ぶれになっている。AIという新しい技術を使うとはいえ、業務効率の向上を目的にしており、既存のファッションビジネスに精通した事業者が有利になるためだ。安価で使いやすいサービスも登場しており、今後も導入する企業がさらに増えそうだ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年11月18日号からの抜粋です)
AIが変える「アパレル業務革命」
勢いがあるのが、スクロールインターナショナル(SCROLL INTERNATIONAL)の「ライトチェーン(Lightchain)」だ。使用料を低めの定額制に抑える一方で、多彩な機能を実装しており、しかも月単位で新機能を加えている。機能やサービスの大半は、親会社のスクロール(SCROLL)とも連携し、徹底的にユーザー目線で開発、AIやデジタルに詳しくない現場の担当者でも使いやすく設計されている。「まずはデファクトスタンダードなサービスとしてアパレル業界に定着させる」(音羽裕之社長)。今年2月のサービス開始でありながら、大手小売やOEM企業で急拡大しており、年内に100ブランドに広げる考えだ。
AIを使ったサービスとしてもう一つの注目分野が、在庫管理だ。在庫管理はアパレルでは長い間課題になってきたこともあり、比較的早いタイミングでAIによる需要予測サービスが登場したものの、季節やトレンド、シーズンごとに新デザインが投入されるアパレルでは、実際にAIを使っても需要予測は難しかった。「既存の在庫の適正活用」を打ち出すことで、ユーザーを急拡大したのが大阪のフルカイテン(FULL KAITEN〈大阪、瀬川直寛社長〉)だ。加えて、強力なAIと24カ国で2億SKUという膨大なSKU運用の実績を引っ提げ、外資のゴールドラット(GOLDRATT)が「ワンビート(Onebeat)」の展開をスタートした。新しい販路であるECが急成長したことで、アパレル企業の在庫運用はさらに複雑になり、一定以上の規模の企業では人の手には負えなくなりつつある。AIを駆使して在庫を効率的に管理する着眼点は、非常に理にかなっており、今後も拡大しそうだ。ただ、現時点ではいずれの分野でも、多くのユーザーを抱えデファクトスタンダード化したサービスや企業は出現しておらず、今後も新規参入するプレーヤーが続々と登場すると見られる。
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