毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年11月18日号からの抜粋です)
横山:今年のDX(デジタルトランスフォーメーション)特集は、リテールDX、AI、店舗DX、サプライチェーンDX、中国の章立てで先進企業の事例を紹介しました。DXとは何かというと、業務そのものを革新するのが本来の意味合いで、既存の枠組みを変えていくということです。少し先の未来が見えます。
小田島:特に注目の取り組み事例といえば?
横山:まさに模範回答だったのが、ZOZOが2026年のオープンを目指して取り組む無人店舗ですね。ZOZOはこの数年心血を注いで「似合う」を研究しており、未来の無人店舗ではその成果を学習させたAIチャットボットが接客・提案するミラーがお目見えしそうです。とても曖昧だけれどファッションにとっては重要な「似合う」を解明し、リアル店舗に実装するというのは、世界的に見ても面白い試みだと思いました。販売員不足の解消にもつながりますし。
小田島:まさにDXですね。
横山:「似合う」についてデータを分析し、それをパーソナルデータと照合しながらAIが接客するというのは、かなり理にかなっています。ECのように自動販売機的に買えるというのではなく、もっと能動的で、リアル店舗の価値の本質にも近い。これがうまくいけば、国内外問わず後追いする企業も出てきそうです。
小田島:最近、骨格やカラー診断をしてくれるミラーを導入する商業施設が増えていますが、どこも行列ができています。気軽に診断でき、「(買い物に)失敗したくない」心理にも応えるようで人気です。その延長としても期待ですね。
さまざまな苦労の先に成果が生まれる
横山:DXの難しいところは、導入時にいきなり成果が出ることが少なく、最初は現場もすごく混乱するし、文句も出てくるところです。うまくいくには、社長なり経営幹部が、現場の業務を実質的に理解し、「これを導入すればこれだけのメリットがある」と説明し続けることが必須です。
小田島:去年、ローンチメトリックスを導入したバロックジャパンリミテッドを取材しましたが、導入・実働のためのさまざまな苦労の末に大きなメリットを得ていました。
横山:ただ、DXは成功例があって先が見えているものもあれば、まだ見えてないものも多いんです。ZOZOの試みは、まだ見えていないですよね。先進的試みとして注目です。