ブランドとファッションブロガーの関係性が変化している。ここ数年、ブランドやeコマースのサイトでは、ファッションブロガーを活用したプロモーションが活発化しているが、最近ではブランドの商品を身に着けた画像を投稿する従来の方法に加え、ブランドとのコラボ商品の発表やブランドが主催するイベントへの出席など、ファッションブロガーの活躍の場が広がっている。
ブロガー自身がセレブ的な影響力を持つようになり、一部の人気ブロガーは年間100万ドル(約1億200万円)以上の収入を得る時代に突入した。イベントの出席料も数年前までは5000ドル(約51万円)程度だったのが、現在では2倍以上の1万〜1万5000ドル(約102万〜153万円)にはね上がっている。トップブロガーと評される者であれば、ラグジュアリーブランドの旗艦店オープンのパーティなど、ひとつのイベントに出席するだけで5万ドル(約510万円)もの出席料を受け取ることもあるようだ。
2010年に、「年収10万ドル(約1020万円)のブロガー」として世間を賑わせたフィリピン出身で32歳のファッションブロガー、ブライアン・グレイ・ヤンバオは「ファッションブロガーは出費が多いので、本格的なビジネスとして考えると、この年収(10万ドル=約1020万円)はもはや少ない」と話す。彼は、最近では「アドリエン・ランドー(ADRIENNE LANDAU)」とコラボしたファーのコレクションを発表しており、アイウエアブランドの「リンダ ファロー(LINDA FARROW)」とのコラボに向けた交渉も進めている。「ジャスト カヴァリ(JUST CAVALLI)」NY店が彼を招いて行なったファンイベントの売り上げは、過去2番目の高さを記録したという。
具体的な金額についてはコメントしなかったが、「サンプルではなく自分で買った服を着て、快適な生活を送るぐらいは稼いでいる」と話すブライアンは、ブロガーとしてのコンテンツの発信の方法も変えているそうだ。ブランドの宣伝色が過剰なものや、商品の販売につながるリンクを多用した投稿は避け、ブログの内容を重視することで自身のアイデンティティと読者の信用を保つという。
イベントやコラボレーションなどのオファーも手当り次第受けているわけではない。有名出版社から莫大な報酬と共にエディターの座をオファーされたにもかかわらず断っており、某マスブランドからは7万5000ドル(約765万円)でバッグのデザインを手掛けてほしいという話を持ちかけられた際も辞退しているという。
小売店の売り上げには大きく貢献しているファッションブロガーだが、ブログに掲載したリンクから実際に商品の購入に至る消費者はわずか1%だ(リワードスタイル調べ)。
そんな中で、ブログと同等、もしくはそれ以上の閲覧者を引き付けるブロガーのSNSアカウントを利用することで、購入率を上げようとする動きもある。今年1月にローンチしたオンラインプラットフォーム「ライク トゥ ノウ(LIKE to KNOW)」は、ブロガーがインスタグラムに投稿したルックに「ライク」を押せば、瞬時にその商品の購入画面へのリンクがメールで届くというシステムを導入。現在1300人以上のブロガーがこのサービスを利用しており、3月から100万ドル(約1億200万円)の売り上げを計上している。このように、ブログ以上にユーザーとアクセス数が多いSNSを使ったプロモーションも始まっている。