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「オン」「ホカ」「ナイキ」等17ブランド25年シューズ一挙見せ! 米の有力ランニング見本市「TRE」

米テキサス・オースティンの見本市会場で年1回開かれている「ザ・ランニング・イベント(The Running Event以下、TRE)」は、2006年にスタートしたロードランニングやトレイルランニング、アウトドア分野のシューズやアパレルの総合展示会だ。2024年は11月19〜21日に行われ、ランニング市場の主要プレーヤーから新興系まで約350ブランドが出展。バイヤーはもちろん、「ランニング市場のここ数年の急成長を背景に、視察に訪れた大手小売業の経営陣も多かった」とBCEコンサルティングのマット・パウエル(Matt Powell)シニアアドバイザーは振り返る。「ランニングカテゴリーがスニーカービジネスで今一番勢いがあり、その波に乗ろうとしている人の多さを表している」と分析する。

ランニング市場拡大の背景には、ランニング人口がグローバルで増加していることはもちろんあるが、シューズ単価が上がり続けていることも大きく影響している。単価上昇は“スーパートレーナー”シューズの急増による部分が大きい。最新テクノロジーを搭載したスーパーシューズがレース当日だけでなく、一般ランナーの日々のトレーニングでも支持されるようになっており、それが単価上昇につながっている。

オン(ON)」や「ホカ(HOKA)」がイノベーション(技術革新)によって従来のスニーカー業界に創造的破壊を引き起こしてきたことが象徴するように、今、このマーケットでは、プレーヤー各社が最新テクノロジーを生み出すために切磋拓磨を重ねている。「TRE」で注目を集めていた、各社の25年向けシューズを紹介する。

【ON】
Cloudboom Max

「TRE」で最も注目を集めていたシューズの1つと言っていいのが「オン」が発表した“クラウドブーム マックス(Cloudboom Max)”だ。パリ五輪の女子マラソンで、「オン」の最新シューズを履いたヘレン・オビリ(Hellen Obiri)選手が銅メダルを獲得したことは記憶に新しいが、“クラウドブーム マックス”で「オン」が念頭に置いたのは、トップアスリートではなく平均的なランナー。ソールに入れたプレート“スピードボード”のしなりを調節し、一般ランナーがレース当日にケガの心配なく履けるスーパーシューズを開発した。市場の空白を埋める存在になると期待する。8月発売で、価格は230ドル(約3万5420円)だ。

【HOKA】
Mafate X

「ホカ」は“マファテ X(Mafate X)”を発表した。“マファテ”は「ホカ」のフラッグシップモデルの1つであるトレイルランニングシューズだが、新作はカーボンファイバープレート搭載。クッション性の高いEVAフォームのソールとPEBAの足入れ部でカーボンプレートを挟んでいる。通気性の高いアッパー素材を使用し、アウトソールは“ビブラム メガグリップ”を採用。アウトソールのラグ(滑り止めの凹凸)が、ファニーなピザとタコスのモチーフになっている遊び心もポイントだ。5月発売で、255ドル(3万9270円)。

【UNDER ARMOUR】
Infinite Mega

近年シューズを強化している「アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)」は、多くのランナーが思わず立ち止まるようなデザインのシューズを発表した。「アンダーアーマー」出身の業界のベテラン2人が独立して創業したシューズブランド「スピードランド(SPEEDLAND)」とのコラボレーションで開発した、“インフィニット メガ(Infinite Mega)”だ。スキーやスノーボードブーツに使われるBoaダイヤルを2つ搭載し、ダイヤルを回して足にフィットさせる構造で、かかとのフィット感がカスタマイズできる。1月発売で250ドル(約3万8500円)。

【MERRELL】
Adapt Matryx

米アウトドアブランド「メレル(MERRELL)」は、トップアスリートと開発する“メレル テスト ラボ”ラインの“アダプト マトリックス(Adapt Matryx)”でトレイルランニングシューズの新作を見せた。“フロートプロプラス”フォームを採用した厚底のミッドソール、耐摩耗性を誇る素材“マトリックス”のアッパー、“ビブラム メガグリップ”のアウトソールが特徴で、さまざまな地形での安定した走りを追求。5月発売で180ドル(2万7720円)。

【SALOMON】
S/Lab Ultra Glide

サロモン(SALOMON)」は、8月に仏モンブランのトレランレース「UTMB」の展示会で発表していたモデル、“エスラボ ウルトラ グライド(S/Lab Ultra Glide)”を「TRE」でも目玉として展示した。“エスラボ”はエリートアスリート向けに開発する製品群だが、“エスラボ ウルトラ グライド”は、トップランナーだけでなく一般ランナーも履けるよう快適さにフォーカスして設計。ブランドが“リリーブスフィア”と名付けた、アウターソールの半球が連なるような形状が特徴。2月発売で250ドル(約3万8500円)。

【SAUCONY】
Endorphin Elite 2

老舗ブランドの米「サッカニー(SAUCONY)」は、日本ではクラシックスニーカーのイメージが強いが、近年スーパーシューズの文脈でも名前を聞く機会が増えている。4月に開催されるワールドマラソンメジャーズ(マラソンの世界6大大会)の1つ、ボストンマラソンに先駆けて、3月に“エンドルフィン エリート2(Endorphin Elite 2)”を発売する。最大の特徴は、“インクレディラン”フォームを採用したミッドソール。柔らかさと反発力を両立しており、カーボンファイバープレートも搭載している。275ドル(約4万2350円)。

【BROOKS】
Glycerin 22

「ブルックス(BROOKS)」は米国のランニング専門店での売り上げシェア1位を誇り、一般ランナーから厚い支持を集める老舗ブランド。人気の“グリセリン(Glycerin)”シリーズの最新モデル、“グリセリン 22”を2月に発売する。ブランド独自の“DNAチューンドミッドソール”で快適な履き心地を提案する。165ドル(約2万5410円)。

【ALTRA】
Lone Peak 9+

09年に創業し、18年からVFコーポレーション傘下の米「アルトラ(ALTRA)」。日本ではトレランシューズがランナーだけでなく、ウルトラライト志向の登山客にも広く支持されている。好評モデルの最新作“ローン ピーク 9+(Lone Peak 9+)”は“ビブラム メガグリップ”アウトソールと、頑強なリップストップ素材のアッパーが特徴。3月にアウトドア専門店チェーンのREIの独占で発売し、その後他の小売店での販売も開始予定。155ドル(約2万3870円)。

【LA SPORTIVA】
Prodigio Pro

伊ドロミテで1928年に創業した「スポルティバ(LA SPORTIVA)」は、登山靴やトレランシューズ、クライミングシューズなどを手掛ける山岳ブランド。今回の「TRE」では、3月に195ドル(約3万30円)で発売するトレイルランニング用スーパーシューズ“プロディジオ プロ(Prodigio Pro)”を発表した。柔らかく反発性の高いミッドソールが特徴。アウトソールのラグ(滑り止めの凹凸)は4ミリメートルで、ブランドとしてこれまでで最もグリップ力を高めたという。

【DIADORA】
Nucleo 2

伊スポーツブランド「ディアドラ(DIADORA)」は、登山靴メーカーとして創業し、現在はサッカーやテニスといった多様なカテゴリーやライフスタイルもカバーする。25年は、人気ランニングブランドにも負けないシューズを投入する予定。最注力モデルは、高いクッション性を備えた一般ランナー向けのトレーニングシューズ“ニュークレオ 2(Nucleo 2)”で、これは例えば、「ホカ」のロードランニング用の人気シリーズ“クリフトン(Clifton)”を競合として意識しているという。1月から2カ月ごとに新色を投入予定で、160ドル(約2万4640円)。

【TRACKSMITH】
Eliot Racer

「トラックスミス(TRACKSMITH)」は、14年に米ニューイングランドでスタートした新興ランニングブランドであり、トラッドムードのレトロなアパレルやシューズがファッショナブルなランナーから支持されている。「TRE」で発表したスーパーシューズの“エリオット レーサー(Eliot Racer)”は、クッション性の高いミッドソールを搭載していながら、つま先接地で走ればかつての薄底ランニングシューズのように見えるとブランドはコメント。重量は片足で210グラムほど。3月発売で280ドル(約4万3120円)。

【VEJA】
Condor 3 Advanced

「Bコープ」認証を取得し、サステナビリティに注力する仏スニーカーブランド「ヴェジャ(VEJA)」も「TRE」に出展し、多用途で使えるランニングシューズ“コンドル 3 アドバンスド(Condor 3 Advanced)”を発表した。エネルギー効率を高めるためにソールにEVAダイナミックプレートを搭載、前モデルと比較してつま先部分に余裕を持たせている。2月に200ドル(3万800円)で黒を発売し、秋以降、カラー展開が増える予定。

【ADIDAS】
Adizero Adios Pro 4

大手スポーツメーカーももちろん「TRE」には勢ぞろいしていた。「アディダス(ADIDAS)」は“アディゼロ アディオス プロ4(Adizero Adios Pro 4)”(日本では11月27日に先行発売済み、販売価格2万8600円。一部カラーのみ1月発売)を展示。トップアスリートだけでなく、タイムを求める一般ランナーも対象にしたレース用スーパーシューズだ。“アディゼロ”シリーズから、トレーニング用スーパーシューズの“アディゼロ エヴォ SL(ADIZERO EVO SL)”も24年秋に発売済み(日本での販売価格は1万9800円)。

【PUMA】
Fast-RB Nitro Elite

プーマ(PUMA)」は21年にパフォーマンスランニング分野の再強化に着手して以来、ホットなブランドとなっており、あらゆるレベルのランナーに向けてシューズを開発している。25年のハイライトは、24年8月に発売したスーパーシューズ、“ファストアールビー ニトロ エリート(Fast-RB Nitro Elite)”のアップデート版を1月に発売すること。モデル名の“アールビー”は、常識破り(rule breaking)を意味する。8月発売モデルにはアッパーのシューレースがなかったが、アップデート版はシューレースを付け、フィット感をカスタマイズできるようにした。350ドル(約5万3900円)。

【ASICS】
Gel-Nimbus 27

アシックス(ASICS)」が「TRE」でフォーカスしていたのは、人気シリーズの1つ“ゲルニンバス(Gel-Nimbus)”の最新モデル“ゲルニンバス27“だ。実績のあるこのシリーズは、“FFブラスト+”フォームでできた単一ミッドソールのかかとにゲルを封入している。前作に比べ、ミッドソールを2ミリメートル厚くしてクッション性をより高めているのにも関わらず、重さは変わっていない。1月発売で165ドル(約2万5410円)。

【NEW BALANCE】
880 v15

ニューバランス(NEW BALANCE)」は、3月に“880 v15”を140ドル(約2万1560円)で発売する。毎日走る相棒となるような、ケガから守ってくれるシューズとブランドは表現しており、前作からアウターソールのパターンを調整し、ミッドソールも少し厚みを増している。

【NIKE】
Vomero 18

ナイキ(NIKE)」は17年にカーボン入り厚底シューズを投入し、ランニング市場に革命を起こしたが、近年はイノベーションの苦境にあり厳しい目を向けられている。25年はランニングシューズを3本柱に集約し、トップアスリートだけでなく多くのランナーが自分に合ったシューズを見つけられるようにする。1つ目の柱は“ストラクチャー(Structure)”シリーズに代表されるサポート力のあるクッショニングのシューズ、2つ目は“ペガサス(Pegasus)”に代表される反発力あるクッショニングシューズ、3つ目は“ボメロ(Vomero)”に代表される最大クッショニングのシューズだ。特に25年は“ボメロ”に注力し、最新の“ボメロ 18”は150ドル(約2万3100円)で発売。25年秋には“ボメロ プラス”をリリースし、その後プレミアムバージョンも出す予定という。

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