資生堂は11月29日、2カ年計画「SHIFT 2025 andBeyondアクションプラン2025-2026」を発表した。「シセイドウ(SHISEIDO)」など売上高1000億円規模の3ブランドと、1000億円を目指す5ブランドを明確にし、ブランドポートフォリオ戦略を強める「ブランド力の基盤強化」と、「高収益構造の確立」を軸に、変化の激しい市場でも安定的な拡大を実現する事業構造の構築を目指す。
藤原憲太郎社長はコロナ禍以降を「多くの外部環境の変化に影響を受け、その都度対応してきたが、結果として当初の計画が未達に終わっている」と振り返った。市場の不安定な状況は今後も続くことを前提に、2カ年計画「アクションプラン2025-2026」を策定したが「成長を決して楽観視せず、厳しい現状を踏まえた」とした。
「ブランド力の基盤強化」で注力ブランドの選択と集中
最優先課題の一つに掲げる「ブランド力の基盤強化」は、注力ブランドへの選択と集中、グロスプロフィットの最大化、ブランド価値強化に向けたブランドと地域での連携したオペレーション体制強化を具体的な取り組みとする。注力ブランドへの選択と集中では、売上高が1000億円を超える「シセイドウ」「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」「ナーズ(NARS)」を“コア3”に設定。ブランド価値の精華、ヒーロー商品に集中したマーケティングの強化、欧米とアジアパシフィックでの成長を加速し、日本での成長の勢いを維持する。
次の売上高1000億円ブランドとして「アネッサ(ANESSA)」「ナルシソ ロドリゲス(NARCISO RODRIGUEZ)」「イッセイ ミヤケ パルファム(ISSEY MIYAKE PARFUME)」「エリクシール(ELIXIR)」「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」を“ネクスト5”と位置づける。“ネクスト5”は、主力市場でローカルニーズを取り込むことで成長を実現し、収益基盤を整えることを最優先課題とする。利益率を改善し、セルフファンディングできるようなブランドになることで、他地域への積極展開を目指す。
カテゴリーはサンケアとフレグランスを戦略的に強化。これらを含め、ブランド力強化として、24年から2カ年累積で300億円のマーケティング投資を追加していく。一方で、収益性や成長性も鑑みて、戦略的なブランドの撤退・縮小などの検討も進める。
24年度時点で、全体の売り上げに対する“コア3”と“ネクスト5”の構成比は7割を超える。重点的な投資を通して、26年末時点で全体の8割以上を割り当てる形を目指す。“コア3”と“ネクスト5”は平均を上回るブランドマージンを有するため、集中投資によって成長加速を図り、全社的なブランドミックスによる利益率の改善にもつながる。ブランド認知をより先鋭化するため、競争優位の源泉である技術力と研究開発力をダイレクトにブランド価値へ転換することに重点を置く。
聖域なきコスト構造改革で「高収益構造の確立」目指す
最優先課題の二つ目である「高収益構造の確立」は、グローバルでの固定費の低減、日本・米州・欧州・アジアパシフィックの収益性のさらなる改善、中国とトラベルリテールの事業基盤再構築を指す。「グローバルで聖域なきコスト構造改革」を実行し、24年と25年は、日本と中国を中心に400億円越えのコストカットを目指す。26年は米州と生産部門における原価低減を含むグローバル本社を中心に実施し、250億円のコストカットを実行する。原価やマーケティング投資の削減に取り組むが、半分以上は人件費、その他経費が占める予定だ。
これらを実施し、26年は、原価が24年度比2%減の22%、マーケティング投資が同1%増の29%、ブランド・研究開発投資が並の4%、人件費と経費が同2%減の38%、コア営業利益率は2倍の7%を見込む。
中国市場については「中国市場は中長期的に見れば巨大な消費市場であることは間違いない。アジア人の肌のエキスパートである当社が中国で提供できる新しい価値はまだまだたくさんある」と話す。ニーズの多様化を捉えたポートフォリオ戦略、消費者・市場変化の即応する組織能力強化、ブランド価値の最大化に注力する。これらの取り組みの結果、26年の地域別売上高構成は日本、米州、欧州、アジアパックの構成比が引きあがることを予測する。
そのほか、アセットライト(保有資産の適切な見直し)の推進、グローバルオペレーション体制の進化、財務ガバナンスの抜本的強化にも取り組む。
コア営業利益率を2倍の7%に
「アクションプラン2025-2026」を通じて、26年はコア営業利益率を24年の2倍の7%を目指す。「7%はあくまでも通過点」としながら、26年はブランドに再投資可能なバランスの取れた収益構造の改善を目指す。25年は24年の利益率3.5%からの改善を見込まず、これまで取り組んできた構造改革による200億円のコスト削減に徹する。「正念場となるこの2年を乗り切るために全ての施策をグローバルで一丸となり推進する“グローバルワンチーム”の構築が不可欠」とし、現地の深い理解を持つローカル人材をブランドの育成価値化につなげること、オペレーションエクセレンスの追求によるリーンな組織の実現の2つを注力する。