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特集 信頼を勝ち取る27メディアのナンバーワン! / 全12回

【小学館「プレシャス」】真のエレガンスを追い続ける唯一無二のラグジュアリー誌に

小学館初のラグジュアリー誌として誕生した「プレシャス(PRECIOUS)」が今年4月号で創刊20周年を迎えた。同誌はその名前を意味する「貴重な」「高価な」「尊敬すべき」に通ずるエレガンス、そしてラグジュアリーの本質を創刊から問うてきた。「エレガンスとはなんですか」 ―その探求心は、細部に宿る美にこだわりながら、誌面において美しく贅沢に表現されている。池永裕子新編集長に、同誌の揺るがない指針について聞く。

WWD:2025年1月号から率いる「プレシャス」の方向性は?

池永裕子編集長(以下、池永):根本的には大きく変えるつもりはありません。今もなお第一線で活躍されている方々を含め、フォトグラファーやエディトリアルデザイナー、スタイリスト、ヘアメイク、ライターら創刊メンバーも多く携わっていて、20年間打ち出している“エレガンス”と“ラグジュアリー”を探求する根幹は継続していきます。

WWD:「プレシャス」の根幹について改めて教えてほしい。

池永:情報過多の時代において、自分にとってのラグジュアリーとは何か、その本質とは何かを見極められる審美眼、そして内面も外面も輝いていたいと思う人の気持ちは創刊から大事にしています。トレンドは最優先にはしていません。かといって、必要じゃないということではなく、自分を潤してくれるものを求める読者にとって最終的に役立つものを厳選しています。

WWD:読者に役立つ、そして生き方につながるラグジュアリーな提案とは。

池永:例えば、上質なカシミヤのブランケットを紹介するために、森林に囲まれた別荘にある、暖炉とソファーを置いた温かな部屋の中心にブランケットをさりげなく置く。そうすることで、豊かな週末を思い描くことができます。なぜこのアイテムがここにあるのか、なぜこの人がここにいるのかという違和感のある写真にならないように、絵コンテからシーンを考え、単にモノにフォーカスするということではなく、ライフスタイルに寄り添った提案を心掛けています。

WWD:強みとしてきた“本質”の提案は、今のラグジュアリーブランドが打ち出していることに近いのでは?

池永:そうですね。“シンプル・ラグジュアリー”を以前から提案してきた雑誌なので、インティメートになってきたなという感覚はあります。アイテムの素晴らしさを伝えるために、サヴォアフェールのストーリーや上質な素材のテクスチャーだけでなく、実用性を伝えるスペックもしっかり説明するよう徹底しています。今やコスメも成分買いが主流ですが、ラグジュアリーアイテムを熟知する「プレシャス」読者もそうしたモノ作りの背景やエビデンスを大切にしています。どういう思いや経緯で生まれたアイテムなのか、そこにロマンを感じられるんですよね。

本質を知るため触れて理解する  
デジタル以前の編集の基本を徹底

WWD:変わりゆく時代の中、“変わらないもの”を続けることのやりづらさはないか。

池永:ていねいな交渉は必要です。名品を集めた人気の特集では、私たちが考える、受け継がれてきた絶対的人気の“永遠の名品”を紹介しています。必ずしも、店頭に並ぶ最新商品ではないため、その場合は編集部から、なぜこのアイテムが必要かをきちんと説明するようにしています。本誌のためにお力を貸してくださるPRのみなさまには、心より感謝申し上げます。

WWD:紙媒体としてのこだわりや、公式サイト「Precious.jp」との差別化は?

池永:紙の魅力はやはり写真だと思うのです。モデルやアイテムと、背景の余白をどう使うことで美しいビジュアルが作れるか、細かくこだわっています。なので、ロケハンにもよく行きますし、先方からアイテム画像だけを提供いただくことは極力避けています。“本質”を探求する上で、アイテムは必ず手に取り、重さや素材の風合いを理解します。そこから、フォトグラファーとどんなライティングにすれば、起毛した素材やダイヤモンドのきらめきを伝えられるドラマティックな撮影ができるか考えていきます。アイテムは必ず全方位見ること。デジタルがない時代の編集の基本ですよね。一方で、「Precious.jp」はラグジュアリー体験の入り口のような場所。紙は色校正を2回出す早めの進行スケジュールのため、キャッチーな情報を取りこぼしてしまうことがあるので、そこを補完する役割も担っています。

WWD:24年4月号から頻繁に発行している別冊付録は、本誌とは異なる、より身近なライフスタイルの視点、そしてクオリティーの高さが多くの反響を呼んでいる。

池永:「プレシャス」は当初から現物の付録文化のある媒体モデルではなかったので、単行本を作る気持ちで制作しています。世界各地のアマン、オープンしたばかりの麻布台ヒルズを丸々一冊紹介する編集企画もありますが、読者のライフスタイルの延長線にあるシーンやアイテムを、本誌とは違う切り口で考えています。トライアルで企画することも多く、たとえ1ブランドフォーカスでも媒体として今必要であると思えば、ブランド協力を得て編集企画として制作することもあります。付録の良さは長く読んでもらえること。ありがたいことに発行から数カ月〜数年後に問い合わせを頂くことがあるほど、継続的な反響もあり、売り上げに寄与していると実感しています。

WWD:今後の展望は?

池永:さらに20年後にもバトンをつなげたいという思いで取り組んでいます。創刊号で紹介したアイテムを、最新号でもう一度名品として紹介しているのも「プレシャス」という媒体だからこそ。やはり、持続していくことは、すごく難しい。私たちは未来にしか歩いていけないので、その未来を照らしてくれるものを常に提案していきたいです。いいものをきちんと見極めて、ちゃんと更新していきたい、ライフステージに合ったものを身につけていたいと思う人たちと常に対話をしながら誌面を作っているので、媒体を大きくし、もっと有名にするために違う方向性を考えるということはしていません。流動的な時代の中で、変化し続けるラグジュアリーの定義を自分自身に常に問いかけながら、真のエレガンスを探求していきたいです。


「プレシャス」(小学館) DATA
【MAGAZINE】創刊:2004年4月 発行部数:3万9000部
【WEB】月間UU:359万 月間PV:564万
【SNS】X:1万 IG:24万 LINE:84万 YT:7900

TEXT : RIE KAMOI
PHOTO : HIDEAKI NAGATA
問い合わせ先
小学館
03-3230-5350