イタリア・フィレンツェで毎年2回開催するメンズ最大の見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO以下、ピッティ)」は4日、東京のファッション・ウイークを運営する日本ファッション・ウィーク推進機構(JAPAN FASION WEEK ORGANIZATION以下、JFWO)とパートナーシップ契約を締結した。契約期間は1年で、今後は複数年にわたっての協業を視野に入れているという。同日には東京・三田の駐日イタリア大使館で記者会見を行い、「ピッティ」のラポ・チャンキ(Lapo Cianchi)=チーフ・コミュニケーション・オフィサーとフランチェスカ・タッコーニ(Francesca Tacconi)=スペシャル・イベント・コーディネーター、古茂田博JFWO事務局長、2025年1月開催の第107回「ピッティ」ゲストデザイナーとして参加が決まっている「セッチュウ(SETCHU)」の桑田悟史デザイナーが登壇した。
「ピッティ」とJFWOは、12年以降さまざまな共同での取り組みを行ってきた。「サルバム(SULVAM)」「ヨシオクボ(YOSHIO KUBO)」「ベッドフォード(BED.J.W.FORD)」のショー開催や、「TOKYO KNIT」「東京ファッションアワード」「Jクオリティー」のブース出展など、日本の50以上のブランドやプロジェクトを「ピッティ」で紹介してきた。6月に開催した第105回「ピッティ」でも日本は、ドイツ、オランダ、イギリス、スペインに次ぐ参加企業数で、今回のパートナーシップ契約で日本企業のさらなる新規参入を狙う。両者による具体的な取り組みについては検討段階だが、「われわれは日本の若手デザイナーにとても興味がある。日本でどういうブランドが注目されているかの情報がこれまで以上に得られるだろう」と、チャンキ=チーフ・コミュニケーション・オフィサーは期待する。さらに「ブランドに加え、日本で注目されている店のバイヤーやメディアともさらに連携を強化していきたい」と続けた。
古茂田事務局長は、協業の背景について「JFWOと『ピッティ』は、共にコレクションとテキスタイル事業の両方に取り組んでいる共通点があり、協業は自然な流れだった。日本ならではの優れたクリエイションや素材開発力を、『ピッティ』という世界への扉を通じて輩出していきたい。そのための道を作るにはパリだけではなく、イタリアでもルートを広げる必要があると感じていた」と語った。日本人デザイナーや企業の参加を支援するための資金や仕組みについては、現在思案中だという。
過渡期の合同展ビジネス
前回の「ピッティ」では、自国イタリア人バイヤーの来場者が前々回に比べて7%減少し、総来場者数は約1万5000人で、1年前から2000人減り、来場バイヤー数も1年前から500人減少だった。一方で、外国からの参加企業数や来場バイヤー数は伸長しており、オランダやドイツ、中国などとの協業によるプロジェクトに手応えを感じている。JFWOとのパートナーシップ契約も、他国との連携強化を推進する取り組みの一つだろう。
また、昨今の「ピッティ」はスタイルにも大きな変化がある。かつては“イタリアン・クラシコ”に強い合同展示会という印象が強かったものの、最近ではストリートウエアやスポーツ用品、ペット用品、古着を扱うなど、コンテンツが多様化している。タッコーニ=スペシャル・イベント・コーディネーターは「世の中は常に変化しており、われわれもライフスタイル化へのシフトを進めている。次回1月にはランニングのコーナーをイギリスのショップと企画しているし、今後はサイクリングの計画もしている」と語った。その変化に対し、チャンキ=チーフ・コミュニケーション・オフィサーは「バランスが大切」と説明する。「私たちは物を売る側ではなく、あくまで場を提供する立場。トレンドを取り入れることは大切だが、かねてからの伝統は一貫している。例えスタイルが変化しても、常に新しい視点を持ってもらえるような場を提供するという部分は変わらないし、そのバランスが『ピッティ』の強みだと思う」。
1月に初のショー形式での発表を控える桑田デザイナーは、「今の『ピッティ』は、クラシックから変化し始めた時期であり、その変化に対していろいろな意見がある大変な立場だと思う。僕はサヴィル・ロウ出身なのでイタリアン・クラシコに寄与できるエレメントは何かしら持っていきたいし、『セッチュウ』が『ピッティ』の多様なスタイルを折衷できれば」と述べた。