コーセーは12月10日、タイ発のウェルネスブランド「パンピューリ(PANPURI)」を展開するピューリの株式を約80%取得したことを発表した。取得価額は約120〜130億円。株式譲渡日は30日を予定しており、3〜5年を目処に残り全ての株式を取得する計画だ。同社の海外ブランドのM&Aは2014年の米発「タルト」以来10年ぶり。
コーセーは11月に発表した中長期ビジョン「Vison for Lifelong Beauty Partner-Milestone2030」で、好調な日本での盤石な事業基盤の構築と圧倒的な存在感の確立により、確実な成長リソースを生み出して持続的な成長にむけた投資につなげる意向を明確にした。今後の成長領域とするグローバル事業では、「脱・自前」による地域に最適化した成長を目指している。これには、現地起点のマーケティング・モノ作りへの転換と地域に根付いたブランドの新規獲得が必要としており、「今回の事案はその第1弾」(小林一俊社長)とした。
小林社長は「タイは日本と共通するおもてなしの文化が根付いており、美容大国でもある。さらに、首都のバンコクは世界で1、2を争う観光都市。グローバル戦略を加速させ、グローバルサウス市場での存在感を確立させていく一手としてふさわしいと考えた」とピューリを傘下とする狙いを話した。同社との親和性は、モノ作りに対するこだわりやブランド価値を大切にする姿勢のほか、「ウェルネス領域への広がりを進めるわれわれの今後の方向性と一致した」とコメントした。
ピューリとのシナジーに期待
想定するシナジーの一つが、売り上げのアップサイドだ。「パンピューリ」はタイ国内のウェルネスカテゴリーのプレステージ市場ではトップシェアを誇り、外国人観光客からの支持も厚い。コーセーはグローバルな販売ネットワークがあるため「パンピューリ」の事業拡大を見込めると考えた。
また、コーセーグループに加入することで、商品の調達、開発、製造におけるコスト削減も期待できるとした。ウェルネス価値の高いスパトリートメントを持つ「パンピューリ」とコーセーが長年培った皮膚科学の研究成果を掛け合わせることで、新たな価値創出にもつなげていきたい意向だ。近い将来、日本でスパ体験を提供する旗艦店の開設を視野に入れ、コーセーが注力するウェルビーイング領域の拡充も図る。
今回の取引に関してピューリのウォーラウィト・シリパーク社長は「『パンピューリ』のマイルストーンの中でコーセーグループに入ったことは大きな節目となる。『パンピューリ』が届けたいウェルビーイングがより世界中に広がることを楽しみにしている」とコメントした。
「パンピューリ」とは
「パンピューリ」は2003年に誕生。ハーブやエッセンシャルオイルなどの植物を使用したフレグランス、バスボディ、スキンケア、ホームフレグランスをラインアップし、自社ウェルネスセンターとホテル3つでスパ事業も展開している。商品は2000〜2万円、スパは1万5000〜2万円の価格帯で提供する。
中国、欧州でも展開しており、24年度の売上高は前年比89%増の約48億円を見込む。年平均成長率は78%と高成長を維持している。売り上げ構成比はタイが74%、スパ事業が17%、海外(中国、欧州、日本など)が6%、その他が3%となる。日本は20年5月にコロナ禍による影響でジャパン社を精算したが20年7月に輸入代理店ルクステカが独占輸入販売権を取得。現在、阪急うめだ本店、伊勢丹新宿本店ビューティーアポセカリー、バーニーズニューヨーク全店、公式オンラインストアで取り扱っている。今後しばらくは引き続きルクステカが販売を担い、その後については未定としている。