ファッション

「ヴァレンティノ」2014-15年秋冬パリ・メンズ 業界全体が思い描く理想の男性像のための服

 「年齢に関わらず若々しいマインドを持っていて、本物の価値を知っている人。ファッションに興味・関心はあるけれど、決してファッション・ヴィクティムではない男性」——。「WWDジャパン」の記者として、さまざまなブランドのデザイナーに「思い描く男性像は?」という質問をすると、彼らの多くはこう答える。しかし、そんな男性は実際それほど多くないし、何より話を聞いたデザイナーの洋服は、半年毎に移ろいゆくトレンドを相当に意識してしまっていたり、若々しすぎて成熟していないように見えたり、逆に大人というより"昔の人"に向けてデザインしているように見えてしまったりすることもしばしば。業界全体が憧れる上述の男性に、彼らに見合う洋服を提供するのはなかなか難しいことだ。

 しかし「ヴァレンティノ(VALENTINO)」は、まさに「マインドは若く、本物とファッションを知る男」に向けた洋服づくりに今シーズンも大成功した。

 コレクションは、ハリスツイードやヘリンボーン、キャメルヘアなどのクラシックな生地を用いることで、まずは年齢を問わず幅広い男性の興味・関心を引き寄せた。それを、決して奇抜になり過ぎない程度に、けれど現代的にモディファイ。例えばクラシックな生地からパジャマのようにリラックスしたスーツやチェスターコート風のポンチョを作ったり、カシミアからTシャツを作り共布のボトムスと合わせたりすることで、クラシックな素材をフォーマルなのにカジュアルマインドが漂うように用いることに成功。結果、「本物を知る男性」「若々しいマインドの男性」の獲得に一歩前進した。

 さらに素晴らしいのは、このブランドのクリエイションは段階的に一歩また一歩と進化しており、決して男性にとって挑戦し難い洋服にはなっていないこと。もちろん、インターシャでカモフラを描いたコートや、ジグザグが背中でフクロウやタカに変身するコートなど、見る者を驚かせる商品もあるが、それでもシルエットそのものは男性にとってのリアルを踏み外さない。こうして「ファッション・ヴィクティム」ではない男性に向けた、リアルなモノ作りに今シーズンも見事成功している。パリメンズはまだ初日だが、早くも今季ナンバーワン候補が浮上した。

ヴァレンティノ 2014-15年秋冬パリ・メンズ 全ルック

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