「シャネル(CHANEL)」は、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のクリエイティブ・ディレクターを務めるマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)を次期アーティスティック・ディレクターに任命した。米「WWD」と「WWDJAPAN」は、このウワサをおよそ1カ月前に伝えている。
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マチューはオートクチュールとプレタポルテ、バッグやシューズなどのコレクションを手掛ける。40歳のマチューは、来年上半期、4月をメドに「シャネル」に加わり、10月に2026-27年秋冬コレクションを発表する予定という。ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=ファッション部門プレジデント兼シャネルSASプレジデントが米「WWD」のインタビューで明らかにした。
ブルーノ・プレジデントは、「マチューとの関係が10、15年と長らく続くことを望んでいる。私たちの物語は始まったばかりだ。ともに新たなストーリーを紡ぐことができるだろう」と話した。同時に彼は、後任候補にはマチューのほか2人のデザイナーがおり、様々なブランドのナンバー2はもちろん、3、4番手との面談も重ねたという。ブルーノ・プレジデントは、「全ての候補者は素晴らしい才能の持ち主だった。改めて、なぜラグジュアリー業界はこんなにエキサイティングなのかを理解したよ」と続ける。
またシャネル社のアラン・ヴェルタイマー(Alain Wertheimer)=グローバル・エグゼクティブ・チェアマンは、「マチューは、この世代で最も傑出したデザイナーの1人。彼のビジョンと才能は、ブランドのエネルギーを活性化させ、ラグジュアリー業界のリーダーとしてのポジションを強固なものにするだろう」と期待する。
マチューは、ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)の後任を務め、創業から114年を迎えたメゾンに参画する。「『シャネル』という素晴らしいメゾンに加わることができて光栄に思う。チームと出会い、ともに新たな物語を描くことが楽しみで仕方ない」とのコメントを米「WWD」に送った。
長きに渡った候補者選び、ポイントは
シャネル、カール、ヴィルジニーへのリスペクト
「シャネル」の候補者選びは、長きに渡り行われた。ブルーノ・プレジデントは、「候補はすぐ3人に絞られたが、中でもマチューは『シャネル』のモダニティを即座に理解するなど傑出していた。メゾンのファンにフィットする価値や才能、ビジョンの持ち主を選んだ。決定的な決め手は、メゾンのヘリテージ、特にココ・シャネル(Coco Chanel)とカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)、そしてヴィルジニーに敬意を表した点だ。『シャネル』は、イメージや売り上げをライバルと競うようなブランドではない。共にストーリーを紡ぎ続けることができるかどうか?が重要だった。中にはブランドを渡り歩いているものの、提案するスタイルは似通い、ブランド側が対応を強いられるケースがあるように思う。一方私たちのブランドには強いアイデンティティが存在し、価値を体現している。全く異なる視点を持ち込めば良いという話ではない。その意味において、マチューの才能はメゾンでさらに花開き、私たちも前進できるだろう。ファッションの売り上げは、『ボッテガ・ヴェネタ』の10〜15倍くらいだろう。全てを1人で対応するのは不可能だ。コレクションやランウエイショーで世界観を示す人物と、素晴らしい製品を作る職人のタッグが必要だ」と話し、歴史の継承やチームワークがマチューを選んだ重要な決め手であること示唆した。
マチューは「メゾン マルジェラ」では“アーティザナル”ラインを手掛けており、オートクチュールの経験も有している。また「ボッテガ・ヴェネタ」では職人と協業して、新しいバッグを次々と開発。「一番大事なのは製品と考える『シャネル』にとって、モノ作りが大好きで、短期間にいくつもの商品をブラッシュアップしたマチューは、『ボッテガ・ヴェネタ』で素晴らしい仕事を成し遂げたと思う」とブルーノ・プレジデントは分析する。
>「ボッテガ・ヴェネタ」の新クリエイティブ・ディレクターに「カルヴェン」のルイーズ・トロッター マチュー・ブレイジーの後任
一方、「ボッテガ・ヴェネタ」を擁するケリング(KERING)は12日(現地時間)、マチューの後任としてルイーズ・トロッター(Louise Trotter)「カルヴェン(CARVEN)」クリエイティブ・ディレクターを起用することを正式に発表した。
マチューは、1984年パリ生まれ。ベルギー・ブリュッセルにあるファッションスクール、ラ・カンブル(La Cambre)を卒業後、「ラフ シモンズ(RAF SIMONS)」のメンズデザイナーとしてキャリアをスタートさせた。その後、「メゾンマルジェラ(MAISON MARGIELA)」を経て、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の「セリーヌ(CELINE)」のデザインチームに。14年にはシニアデザイナーに昇格した。16年からは、当時ラフ・シモンズがチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任した「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」でデザイン・ディレクターを務め、「ボッテガ・ヴェネタ」に加わった。