ネット通販やライブコマース、スマホ決済、ゲームなど、次々と世界最先端のテクノロジーやサービスが生まれている中国。中国専門ジャーナリストの高口康太さんが、最新事情をファッション&ビューティと小売りの視点で分かりやすくお届けします。今回は、「日本発中国行きの越境ECについて」です。急成長中の日本発中国行きの越境ECで人気のアイテムとは?この記事は「WWDJAPAN」2024年3月18日号の転載です)
「越境EC」で取引される多種多様なアイテム
無数のダンボールが積まれた空間。一見すると普通の倉庫に見えるが、ここBEENOSグループの倉庫の中は、驚くほど多種多様だ。一番小さなモノは封筒で、トレーディングカードやCD、ポスターなのだとか。そこから大小さまざまなダンボール箱が連なり、さらに大物になると、ドアやホイール、バンパーなどの自動車パーツ、さらには人気アニメ「エヴァンゲリオン」のパチンコ台という変わりダネまであった。
BEENOSグループの越境EC輸出事業は08年設立のtenso (当時の名称は転送コム)にまでさかのぼる。海外在住者が日本の通販サイトで商品を購入すると、tensoが代わりに受け取り、海外へと発送してくれるというサービスだ。海外で日本の商品を取り寄せるのには送料がネックとなるが、複数の商品を取り置きしまとめて配送することもできるので節約できるケースもある。海外に住んでいる友人知人に代理購入してもらうのが越境ECの源流で、その「友だち」の役割を代替したような立て付けだ。通販で買えるものならばなんでも海外配送できてしまう。ヤフオクやメルカリ経由の中古品も多い。それだけに、雑多なアイテムであふれかえるカオスな倉庫が生まれる。ニッチな取引の寄せ集めなのだが、物流事業を軸として、日本国内向け通販サイトに海外在住者向け販売機能を追加する「Buyee」、海外でのマーケティング支援を行う「BeECruise」などの事業を拡大することで、GMV(総流通額)は1007億円(23年9月までの1年間)に達するまで成長してきた。
さて、BEENOSを取りあげたのはカオスな倉庫を紹介したかったからではない。そのビジネスからは越境ECの多様性や可能性が見えてくるためだ。越境EC輸出で真っ先に名前が上がるのが対中国だが、同社の取り扱いシェアでは一桁台にとどまる。税制や保税区などの制度や販売プラットフォームの整備から、中国向けはある程度まとまった量を販売できる強みがある。特に化粧品やOTC医薬品などは一般貿易で輸出するためには認可が必要となるため、主要な輸出手段として機能している。ただし、中国だけが越境ECのすべてではない。経産省の報告書によると、22年の越境EC輸出は中国向けが2兆2596億円に対し米国向けは1兆3056億円。中国には及ばないが、それなりのボリュームを持っている。また、もともと日本ファンが多い台湾や香港のほか、経済成長が加速している東南アジアの需要も高まっている。
意外な売れ筋
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