「ティファニー(TIFFANY & CO.)」は12月16日、タイタニック号にまつわる、同ブランド製の18Kゴールドの懐中時計を197万ドル(約3億円)で落札したことを発表した。オークションは11月に英国で開催され、落札者は当初、匿名となっていた。なお、これはタイタニック号に関連した遺品として過去最高額だという。
タイタニック号は、1912年4月の処女航海中に氷山に衝突して沈没。その際、遭難信号を受信して急行し、およそ700人の乗客を救助したのがカルパチア号だ。この懐中時計は、同船のアーサー・H・ロストロン(Arthur H. Rostron)船長に感謝の意を込めて贈られたもので、インナーケースには「1912年4月15日 タイタニック号の3人の生存者から、心からの感謝と敬意を込めてロストロン船長に贈る」という謝辞とともに、マデリーン・タルメージ・アスター(Madeleine Talmage Astor)夫人、マリアン・ロングストレス・セイヤー(Marian Longstreth Thayer)夫人、エレノア・エルキンズ・ワイドナー(Eleanor Elkins Widener)夫人の名前が刻まれている。また、ケースバックには船長のイニシャルである“AHR”がエナメルモノグラムで記されている。
「ティファニー」が所蔵する台帳によれば、この懐中時計は12年5月24日にG・D・ワイドナー夫人が135ドル(約2万円)で購入。同月31日にアスター夫人がニューヨークの邸宅で昼食会を開き、ロストロン船長に贈呈したという。
「この宝物を再び迎えられて感無量」
「ティファニー」のクリストファー・ヤング(Christopher Young)=クリエイティブ・ビジュアル・マーチャンダイジング&イベント&アーカイブ担当バイス・プレジデントは、「『ティファニー』のジュエリーやアイテムは、19世紀半ば以来、世界のラグジュアリーにおける礎となっている。想像を絶するようなタイタニック号の悲劇から救助された方々が、感謝の意を伝えるための贈り物として『ティファニー』を選んだことに、ブランドとして身の引き締まる思いだ」と語った。同氏はまた、この歴史的な懐中時計が10年前にもオークションに出品されていたものの、その際にはとある博物館が落札したことに触れ、「このような機会に恵まれる日が来るとは思わなかった。100万年後でもありえないと考えていたので、この素晴らしい宝物を再び当ブランドに迎えることができて感無量だ」と述べた。
なお、「ティファニー」を擁するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、2025年1月に米ロサンゼルスで開催する「LVMH ウォッチ ウィーク(LVMH WATCH WEEK)」で、この懐中時計をメディアや上顧客に披露した後、一般公開する予定だという。
「ティファニー」の時計の歴史
「ティファニー」は1837年の創業。47年からウオッチを手掛け、74年にはスイス・ジュネーブにウオッチの工房を設立した。以来、さまざまな複雑機構を備え、エナメルやエングレービング、ジェムストーンなど豪華な装飾が施された高級腕時計を製造している。