「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス(CHILDREN OF THE DISCORDANCE)」は12月20日、神奈川・川崎のとどろきアリーナで2025-26年秋冬コレクションをショー形式で発表した。会場には約800人のゲストが集まった。志鎌英明デザイナーは前シーズンのショーを行った6月に「25年6月からコレクション披露の拠点をイタリアに移す」と宣言しており、今回をもって日本でのランウエイショーは一旦の区切りとなる。
パリ・メンズ・ファッション・ウイーク開幕1カ月前という、これまで以上に早いタイミングでショーを開催したのは、世界のバイヤーに向けてアピールするためでもある。1年前よりも約1カ月前倒した制作スケジュールにより、「足の震えが止まらず、片目も見えづらくなり、耳も痺れるほどのやばいプレッシャーだった」と志鎌デザイナーはショー後に笑顔を絞り出した。
ストリートにプラスアルファ
ブランドの世界観を押し広げる
テーマには“サンド ダスト フレーバー(sand dust flavors=砂埃の味)”を掲げ、全38ルックで構成した。横浜で生まれ育った彼はこれまで、ヒップホップやスケートボードなどのストリートカルチャーを色濃く反映した服作りで、オーバーサイズのシルエットや派手なプリント、テキスタイルを持ち味にした“やんちゃ”なスタイルが特徴だった。今季もバンダナ柄のウエアや、カレッジTシャツなどのビンテージウエアに着想したデザイン、パッチワークしたトレンチコートやジーンズ、左右の身頃を異素材で切り替えたスカジャンなど、ブランドのシグネチャーを散りばめつつも、テーラード、ブロークコア、ジェンダーレスなどの多様なエッセンスを取り入れた。
例えばベージュの中折れハットにワークジャケット、ダークブラウンのストレートパンツを合わせたファーストルックは、カウボーイのような無骨さを残しながら、流れるようなシルエットも盛り込んで優しいムードをプラス。肩を大きくドロップさせたジャケットは、クラシックとストリートを掛け合わせた「チルドレン」らしいテーラリングで、プリーツスカートや細身のレザーパンツなど豊富なボトムスが、ルールの多いメンズ服に自由なスタイルをもたらせた。
「ペナルティ」から「ウーフォス」まで
コラボ連打で見せる、「チルドレン」の新たな表情
前シーズンの「アンブロ(UMBRO)」との協業が好評で、今季はさまざまなブランドとのコラボレーションが実現した。中でもブラジルのサッカーブランド「ペナルティ(PENALTY)」とはTシャツやサッカーマフラーやボストンキャリーバッグといった25型を制作。「3歳からサッカーに触れてきたこともあり、なじみ深いブランドだった。『ペナルティ』は一時期ブランドを休止させており、再始動のタイミングでコラボのオファーがあり、熱意に共感した」。
また、リカバリーシューズブランドの「ウーフォス(OOFOS)」とはクロコダイル柄のサンダルやクロッグサンダルを、前シーズンに続いてケンタロウ ハシモト(KENTARO HASHIMOTO)によるファッションレーベル「ジョン ドウ(JOHN DOE)」とはバックルを、バイク好きの支持を集める「ウエストコーストチョッパーズ(WEST COAST CHOPPERS)」とはローゲージニット、スエットパンツなどを制作。さらに、「ディッキーズ(DICKIES)」「リーガル(REGAL)」ともタッグを組み、ジャケットやワークショーツ、ローファーをラインアップした。
「これまで見たことのない服を作ることが、グローバル規模では評価される」という思いから、新たな加工工場や機屋、縫製工場とチーム一丸になり、新しい「チルドレン」らしさを模索した。プリントにバイオ加工を施してビンテージの質感を再現したり、ニードルパンチで柄をぼかしたりなど、オリジナル生地の開発にも力を入れたという。「ブランドのために命懸けでサンプルを作ってくれる人たちに出会えた。自分みたいな横浜生まれのどストリート人間が、どこまでチャレンジできるかを見てみたい」。ショーを終えて疲労しきった様子の中、目には静かな興奮が宿っていた。