情報筋によれば、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」のドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)=チーフ・クリエイティブ・オフィサーの契約が2025年2月に期限を迎えるようだ。「ヴェルサーチェ」を擁するカプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)が、同ブランドおよび同じく傘下に持つ「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」の売却を本格的に検討していると海外メディアが12月中旬に報じたこともあり、業界ではドナテラの契約更新についてさまざまな臆測が流れているという。
「ヴェルサーチェ」は本件について、「うわさに対するコメントは差し控える」としている。
カプリと「ヴェルサーチェ」について
「ヴェルサーチェ」は2018年9月、事業をマイケル・コース ホールディングス(MICHAEL KORS HOLDINGS、当時)に21億ドル(約3276億円)で売却。同社は19年1月に社名をカプリ ホールディングスに変更した。
カプリは23年8月、「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を傘下に持つタペストリー(TAPESTRY)に85億ドル(約1兆3000億円)で事業を売却することに合意した。しかし、両社が保有するブランド間の競争がなくなることで独占状態になるとし、米連邦取引委員会(FTC)は本件を停止する仮処分を求めて4月に提訴。10月に米連邦地方裁判所がFTCの申し立てを認める判決を下したことから、11月に両社は買収契約を双方の合意の上で正式に解消した。業績が悪化しているカプリは、これにより自力で業績回復に取り組まざるを得なくなったため、主力の「マイケル・コース」に注力するべく「ヴェルサーチェ」と「ジミー チュウ」を売却するのではとの臆測が広まっている。
「ヴェルサーチェ」の業績は?
カプリの24年4〜9月期決算は、売上高が前年同期比14.8%減の21億4600万ドル(約3347億円)、純利益は同92.0%減の1100万ドル(約17億円)の減収減益。ブランド別での売上高は、「マイケル・コース」が同43.9%減の14億1300万ドル(約2204億円)、「ヴェルサーチェ」は同22.0%減の4億2000万ドル(約655億円)、「ジミー チュウ」は同0.6%減の3億1300万ドル(約488億円)といずれも減収だった。
「ヴェルサーチェ」は、その華やかでセクシーな雰囲気が特徴だが、ここしばらく続いていた“クワイエット・ラグジュアリー”のトレンドにはフィットしなかった。ジョン・アイドル(John Idol)=カプリ会長兼最高経営責任者(CEO)兼マイケル・コースCEOは以前、アナリスト向けの決算説明会で、「ブランドロゴをあしらった商品を減らし、より控えめなデザインを増やしたところ、『ヴェルサーチェ』らしさが薄くなってしまった。また、さらにラグジュアリーなブランドを目指すべくエントリーアイテムを減らしたことも、新たな顧客の獲得に不利に働いた」と語っている。