ファッション

江戸時代後期の着物の柄をメタバースで楽しむ 大丸松坂屋が新春を彩る3D着物を発売

大丸松坂屋百貨店は、オリジナル3Dアバター用の新作衣装として3D着物を発売した。J.フロント リテイリング史料館が所蔵する、江戸時代以前の染織工芸品群「松坂屋コレクション」の衣裳を基に、メタバース空間のファッション文化に合わせてアレンジ。1611年に呉服屋として創業した松坂屋の歴史を汲んだユニークなアイテムが誕生した。

12月26日に発売した第1弾は、伝統的なデザインを現代風に再構築しており、女性用の振袖と帯、男性用の着物と帯をそれぞれ2種類ずつそろえた。振袖は江戸時代後期の振袖の貝合(かいあわ)せ模様と梅に冊子散らし模様を参照。帯も江戸時代の着物の柄をアレンジした。男性用は江戸時代中〜後期の小袖の雪持ち南天に鶏模様と江戸時代後期の夜着の松竹梅に鶴亀柄をアレンジして、粋なスタイルを作った。それぞれ大丸松坂屋のオリジナル3Dアバターに対応し、草履と足袋もセットで3500円。創作物の総合マーケットプレイス「ブース(BOOTH)」で販売中だ。

また、第2弾として、「ロリータ」と「忍者」をコンセプトに、現代風にリメイクしたスタイルを25年1月1日に発売する。

この3D着物を企画する際、大丸松坂屋のメタバースチームは松坂屋名古屋店にある史料館の倉庫に出張。学芸員から各着物の歴史や色柄に込められた意味を学び、発売時期も鑑みて、新春を祝うべく、縁起物が含まれる吉祥をテーマに選定したという。

着物は奥が深く、専門の知識を要する。衣装制作にあたっては、京都室町で呉服商として創業し、京都の伝統文化をアップデートするコーディネーターとして活躍する宮川徳三郎商店の四代目店主、宮川徳三郎に監修を依頼。日本が誇る文化としての着物への敬意を表しながらも、第2弾のアグレッシブなデザインについても同氏のアイデアを多く反映したという。宮川は「伝統と革新が融合するメタバースで、着物業界に新たなマーケットが生まれることを期待している」と語る。

3D化にあたっては、制作を担当したV社が生地の柄やテクスチャーの再現にとことんこだわったという。

着物は形が決まっており、柄の載せ替えで、新作を提案できる。3Dでもサステナブルだ。また、メタバースはさまざまな国からのアクセスがあり、日本文化および大丸松坂屋のアピールにもなる。企業の歴史的資産、文化財クラスの衣裳の新たな活用法としても有効だ。シリーズ継続に期待したい。

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