「ギャップ(GAP)」は、アパレルリテーラーとしてのみならず、ライフスタイルやカルチャーに寄り添ったブランドであることを訴求するための新プロジェクト「ブルーボックス プレゼンツ(BLUE BOX PRESENTS.)」をスタートした。トータルプロデュースするのは、ライターやプロデューサーとして活躍する野村訓市だ。
3月26、27日、2夜連続のトークショー「スピークス(SPEAKS)」と、同時開催の写真展「アイコンズ(ICONS)」で構成された「アイコンズ スピークス(ICONS SPEAKS)」がスパイラルガーデン(青山)アトリウムで開催された。写真展には、Tシャツ、デニムジャケット、ホワイトシャツ、カーキパンツなど「GAP」の7つのアイコンアイテムを用いたポートレート作品が飾られた。モデルを務めたのは、花井祐介イラストレーター、平野紗季子フードブロガー、真鍋大度プログラマー、黒猫チェルシーのボーカルを務める渡辺大知ら。パワーがあり、若く、可能性を秘めた8人のクリエイターが参画した。
トークショー「スピークス」のテーマは"個性とは何か"。考え方は十人十色、その答えは少々難解かもしれないテーマについて野村プロデューサーは「シンプルなものを着た時にこそ、その人の個性がでる」と考える。ゲストは、初日がモデルのクリスウェブ佳子で、二日目が小浪次郎フォトグラファー。それぞれが活躍する現在のフィールドにたどり着くまでのエピソードや、"個性"についての考え方などを聞いた。
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【野村訓市×クリスウェブ佳子】
野村訓市(以下、野村):今回の企画のテーマは"個性とは何か"。僕は特に90年代育ちだから、"いい女"っていうのは、白いTシャツにジーパンだけで、それこそが個性的に見える。余計なことしなくても、飾らなくても格好よくて、ふとした時にその人の個性が現れたりすると思います。ポートレートでは、いろいろな分野で活躍しているクリエイターに「ギャップ」の核となるシンプル、ベーシックなアイコンアイテムを着て撮影してもらいました。
「ヴェリイ(VERY)」のモデルとして、イギリス人の旦那様をもつインターナショナルな女性として、母親としてなど、さまざまな側面から見たときに、モデルという仕事は「生き方としてのアイコン」として一番に立たないということですが、では、例えば自分の体のなかでアイコニックなところはどこだと思いますか?
クリスウェブ佳子(以下、クリス):意外かもしれませんが脳みそですかね(笑)。言葉を発したりとか、体の動きを表現するにあたって一日のなかで一番使っているところですし。外側に出てないから体の一部と認識されにくいですが、内側でも体の一部ということで脳みそだと思います。モデル業では、日々カメラマンさんによってテイストも変わりますし、頭で考えてカメラの前に立ちますね。
野村:撮影についての感想は?
クリス:カメラマンの小浪さんには、今回初めて撮影していただきました。スタジオに入ると「散歩に行こうかと」。天気がよかったので5分くらい外へ散歩に出ました。今まで前持ったコミュニケーションなどはあまりなかったので、面白い人だと思いました。これがすごい強烈な個性だなと。
「VERY」でも家族写真でも笑っていることが多いけれど、笑顔でない写真は久しぶりでした。モデルをはじめた当初、撮られ慣れていないのに笑うということがとても難しかったのを思い出しました。そういった意味で、笑わなくて良い自然な素の自分を撮っていただけたと思っています。
野村:今回は「その人の素を出したい」という意味で、自分の鎧を外してもらうことを考えました。散歩は、撮りなれた気持ちを外してもらうことを彼なりに考えたやり方だったんだと思いますね。
【野村訓市×小浪次郎】
野村:「ブックを見てほしい」と言われて最初に彼に会ったとき、珍しく目に強い力を感じて、興味を持ちました。小浪くんが写真を始めたきっかけは?
小浪次郎(以下、小浪):高校時代にお付き合いしていた彼女が写真を撮っていたので、最初はその影響が強いですね。事故でその大切な人を亡くし、「写真を撮る」ということを深く考えるようになりました。そして、18歳のときにヴォルガング・ティルマンスの写真展へ行き、フォトグラファーを目指すことを決意しました。その後、大学で写真学科に入り、8年間にわたり父親を撮影しました。
野村:フォトジェニックなお父さまですよね。なぜ彼を撮影したのですか?
小浪:15歳から離れて暮らしていたこともあり、父というのが確かな存在ではなかったので。「不確かなものを確立したものにしたい」と思った時に被写体として魅力的な人が近くにいました。最初はなかなか写真を撮らせてもらえなくて3年くらいは隠し撮りしていましたね(笑)。
野村: 今回8人のクリエイターを撮ってみての感想は?
面白かったです。僕ははじめに人のつくった"もの"に惹かれることが多く、その後、人物像に目線が行くタイプ。表現者として舞台に立つ人もいれば手作業の人もいて、それぞれの人に魅力がありました。それが写真にも出ていると思います。
30歳で雑誌『VERY』の専属モデルになり、現在は、母親、モデル、ライター、通訳として活動しているクリスウェブ佳子と、新進気鋭フォトグラファーの小浪次郎。撮影の直前には、「散歩をして距離を縮めた」という二人が生み出したポートレートには、モデル業ではめったに見せることがないという素顔の彼女が映し出されている。いわゆる、ファッションフォトでその被写体の内面や、ありのままの姿を表現することで、"「ギャップ」独自のアート"を打ち出した。トークショーは、作品の背景となる彼らのルーツを知る貴重な機会となった。
なお、今春、「ブルーボックス プレゼンツ」プロジェクトの一環として「ギャップ」がスプリングシーズンに用意した企画は3つ。ポートレート写真展とトークイベントからなる「アイコンズ スピークス」のほか、雑誌「ミルク ジャポン」がプロデュースするピクニックイベント「PLAY」、「ギャップ フィット」を着てランニングを楽しむイベント「RUN」と、店頭でのキャンペーンだけではなく、体験イベントの実施で多角的にアプローチしていく。