「バレンシアガ(Balenciaga)」は、アレキサンダー・ワンがクリエイティブ・ディレクターに就任して2シーズン目。会場は、14区のパリ天文台の天井が高い一室。大きな窓から光がたっぷり降り注ぐ部屋の壁一杯に這わせたグリーンが、どこかニューヨークの街並みを思わせる。
パリとニューヨーク。2つの世界をつなぐワンは、クリストバル・バレンシアガが残したアーカイブと、自身が確立しているアイデンティティ"スポーツ"の融合を進化させた。
冒頭のシリーズは、ライダースやTシャツ、ボクサーショーツやタンクトップなど、スポーティなアイテムをベースにしながら、フォルムはメゾンのアーカイブを丹念に再現している。小さく丸く張り出した肩のラインや、腰を覆う長めのぺプラムといったフォルムからはアーカイブを丹念に研究したことがうかがえる。フォルムはクラシカルかつエレガントだが、ラフィアのようにも見える素材使いやごく薄のレザーなど、新しい素材使いによりどこかフューチャリスティックな印象も加える。
ハンドワークを駆使した生地使いは前シーズンに引き続き、ネットの上にレザーで作ったバラの花を貼りつけた装飾や、小さなピースをつなぎ合わせて形作る花柄などはこれみよがしではなくさりげない。手作業によるこだわりが"ゴージャス"ではなく、"温かみ"につながっているところが次世代を担うデザイナーらしい。
後半に見られるテーラードの再解釈は、今シーズンのパリのトレンドをリードするもの。ラペルはシャツの襟のようにごく小さくし、ボタンは前身頃の中央ではなく少しずれた場所にずらりと並べる。後ろにボリュームを持たせたり、トレーンを引くスタイルもまた、やはりクリストバル・バレンシアガのアーカイブを彷彿とさせる。