「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、16年間アーティスティック・ディレクターを務めたマーク・ジェイコブスによる最後のショーとなった。
そのことは会場に入る前から予感させられた。いつも通りルーブル美術館の敷地内に建てられたテントを今年は甘いピンク色で覆い、入り口では「ルイ・ヴィトン」のメイド服を着たモデルたちが迎え、ポーターが客を誘導する。中に入れば、噴水、メリーゴーラウンド、エスカレーター。座席にはグラフィティ。いずれも、マークが手がけてきたこれまでの「ルイ・ヴィトン」のショーに登場したアイコニックなキャラクターやオブジェたちだ。まるで、マークによる「ルイ・ヴィトン」のアトラクションに乗り込むような気分にさせられた。
アーカイブとは違うのは、それらはすべて黒で塗られていること。メリーゴーラウンドの馬も黒い。毛足の長い敷物で作られたランウェイもまた真っ黒だ。
駅舎にかけられているような大きな時計が午前10時を指すといつも通り、オンタイムでショーが始まった。ファーストルックは、全身にLOUIS VUITTON PARISの文字を描いたモデルのエディ。両手を手錠のようなものでつながれ、意味深である。
続く41ルックのすべてが黒い。リリースには、マークをインスパイアしてきた女性たちの名前がずらりと並ぶ。エマニュエル・アルト、ソフィア・コッポラ、ジェーン・バーキン、ミウッチャ・プラダ、ヴィヴィアン・ウェストウッド、アナ・ウィンター、ココ・シャネルなどなど。服は彼女たちへのオマージュのようだ。そのため、「シャネル」スーツを彷彿とさせるツイードのセットアップや、レザーのライダース、ランジェリールックなどアイテムは幅広い。そしてそれらのほとんどが黒いビジューで飾られている。
黒の中に唯一差し込まれた色がデニムのブルーだ。41ルックの内11ルックのボトムをジーンズとした。装飾を施してはいるが、ストリートを感じさせるデニムであることは変わりない。そして足元は黒いワークブーツだ。パリとニューヨークをつなぎ、自分は、アメリカへ戻る、そんなメッセージにも受け取れる。
フィナーレで、モデルは噴水やメリーゴーラウンドの周りをぐるりと囲み立ち止まった。そして、再び時計の針が進むチクタクという音が響くと、促されるように時計回りに歩き始めた。時計を巻き戻し、一度止めた時間を、再び動かすかのようだ。
フィナーレには涙を浮かべて登場したマーク。突然のニュースを実感した観客たちは、半信半疑に、大きな拍手を送る。マークの辞任のニュースが出たのは、その数十分後だ。
【ルイ・ヴィトン 2014年春夏パリコレクション 全ルック】
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