台湾最大のファッション総合展示会「タイペイ・イン・スタイル(以下、TIS)」が4月16日まで、台北の松山文創園区(松山クリエイティブ・パーク)で開催された。期間中は、台湾や香港、マカオなど、アジアを中心とした国内外の83ブランドが出展。それぞれテイストの異なる注目の若手デザイナーを紹介しつつ、彼らに現地のファッション事情を聞いた。
まず、台湾のウィメンズブランド「プレート ムーブメント(PLATE MOVEMENT)は、グラフィックや広告などを学んだチャオミン・ジュアンとユーチュン・リーのデザイナーデュオが2014年にスタート。2016-17年秋冬は、中国少数民族の伝統的なモチーフを取り入れ、"文化のミックス"をテーマに、コレクションを制作した。現在の卸先は、台湾3店舗で、「まずは中国を含めた国内でビジネスを大きくし、海外バイヤーへの訴求を目指したい」とチャオミン・ジュアン=デザイナー(右)。
2016-17年秋冬コレクションを4月に発表するTISは、2月にスタートする海外コレクションに比べ大幅に日程がずれているが、「台湾には、他国のようなファッション・ウイークがないので、そこに展示会の日程を合わせるということが難しい。仲のいい若手デザイナー同士で情報交換をして、親しいバイヤーを紹介し合い、SNSで個別にコレクションを見てほしいとアプローチしている」。面積が3万6000平方キロメートルと、日本の九州より小さな台湾では、横のつながりを生かした草の根活動も重要になってくるようだ。また、台湾では、「アレッサンドロ・ミケーレの『グッチ』や1990年代のリバイバルなどの影響で、ファッション好きの間では、ビンテージのテイストが流行っている」という。
同じく、台湾のウィメンズブランド「アテナ チャン(ATHENA CHUANG)」は、「フェンディ」などで経験を積んだアテナ・チャン=デザイナーが、2014年にブランドをスタート。紳士服などを手掛けるアパレル会社、嘉裕(カーニバル)の若手支援を受けて、ブランドを運営している。2016-17年秋冬は、「What We Do in the Shadows」という、ヴァンパイアをテーマにしたコメディー映画から着想し、シフォンなどを用いたランジェリー風のドレスにファーやモチーフなどで、遊び心を加えている。現在、台北を中心に台湾に7店舗の卸先を持つが、今シーズンはTISの前に、「日本の合同展や、ミラノで台湾人が運営しているショールームの展示会に参加した」と海外展開に意欲的だ。
マカオから参加した「アノニマス(AXOXYXOXS)」は、デザイナーのエヴァ・ウォンを中心に3人のデザインチームとして、2013年にスタート。モノトーンを基調にしたミニマルなコレクションが特徴だ。「台湾は、マカオに比べて、実用性があって、地味な色みのものを好む人が多い」。マカオ全体でもファッションブランドは、50ほどのため、「香港や上海、シンガポールなど、どこに打ち出していきたいか、都市を決めて、バイヤーに訴求しなければ、知ってもらう機会がない」。現在、取り扱いはeコマースだけだが、この展示会で「台湾のセレクトショップのバイヤーの目に止まってほしい」と語った。
村上杏理