ラフ・シモンズにとって3回目となった「クリスチャン ディオール」のコレクション。クリエイティブ・ディレクターに就任して以来、クチュールでもプレタでも「デイリー」と「パーソナル」、もしくは「エモーショナル」をキーワードにしているラフにとって、今シーズンのクチュールはまさに本領発揮。ムッシュ・ディオールへのオマージュは引き続き根底に流れているが、それ以上にラフらしさが溢れだしている。
フランス・パリの女性だけでなく、様々な人種や民族の女性に想いをはせた今シーズンは、アメリカのスポーツウエア、インドの民族衣装、日本の着物に由来する生地やディテール、シルエットなどを取り入れている。例えばアメリカンなスポーツウエアを意識したパートでは、チュールやシフォン、オーガンジーに息を飲むような色とりどりの刺繍という、従来型のクチュールをあっさり棄却。もちろんカシミヤ仕立てだが、ラグランスリーブでコンパクト丈のジャケットとシルクのTシャツ、そしてネイビーのウールパンツを提案。まるでNYのコンテンポラリーブランドのショー会場に迷い込んだのかと錯覚してしまうほどの、アクティブウエアだ。
以降も「ディオール」にとってアイコニックな千鳥格子をブルー&レッドで作ってみたり、バージャケットをウエストマークしてスーパーキャリアウーマンのフォーマルウエアにしてみたり、メゾンのアイコンをとことんモダンに、そしてコンテンポラリーに昇華していく。ロングドレスさえ、それはサックドレスとトレーンがセパレートできるものだ。
光沢のあるハイテク素材、フリンジで描いた市松模様、そしてまるでサリーのようなドレープ。様々な素材とアイデアで生み出すドレスのモデルたちは終盤、突如会場を取り囲むスクリーンに投影された。その姿は、最高級のドレスを着ているのに無表情で、招待客の眼前をしずしず歩く彼女たちとは大違い。いわゆる「Two Thumbs Up」(「サイコー!!」という気持ちを表した、両方の親指をたてるポーズ)で微笑んでいる。「クリスチャン ディオール」のドレスをまとった時の、最高の高揚感を表現し、観客の共感を誘った。
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