招待状には、「GOD」とも「DOG」とも取れる謎かけのような文字がプリントされていた。ショーが始まるとすぐに、その意味はすぐにわかった。謎の答えは「GOD」であり「DOG」。相反する意味を持つ言葉遊びである。
暗い会場に響く女性の声。ロンドンの女性4人組バンド、サヴェージズの曲「シャット・アップ」の冒頭でボーカリストのジョニー・ベスが語る声だ。「シャット・アップ」が収録されているアルバム「サイレンス・ユアセルフ」という言葉ともにショーがスタートした。
今シーズンの「アンダーカバー(UNDERCOVER)」は、正反対のものがひとつの服の中に共存し、主張し合っている。言葉遊びはその象徴で、「NOISE」と「THOUGHTS」、「CRUELTY」と「SPLENDOR」といった言葉が、トップスの前後や、バッグの上下などに書かれている。
「対象的なものをミックスし、かつシャープに収めたかった。だからカワイイ要素は取り払った」と高橋盾。対象的なのは、言葉だけではない。たとえば素材はネオプレンのような合成繊維と天然素材を合わせる。左半身が透けるオーガンジーで、右半分はレザーなど一着の中に異なる質感の組み合わせも多い。黒いつやのあるサテンのリボンモチーフは愛らしいが、肩や腕を拘束するパーツともなっている。
以前の「アンダーカバー」なら、強い主張が服の形や装飾に投影され、時に過剰とも言えるパワフルな表現につながっていた。しかし、時代は変わり、今は、主張するだけではメッセージが届かない。今シーズン、デザイナーの高橋盾は自分の中に溜め込んだメッセージや相容れない矛盾を一度飲み込み、とことんそぎ落としてシャープにクールに服で表現することで、逆にその声を届けることに成功していた。
【アンダーカバー 2014年春夏パリコレクション 全ルック】