「セリーヌ(CELINE)」のショー会場は16区のテニスクラブ。住宅資材に使われるような剥き出しのコルクの柱と梁で囲んだ空間に、青、緑、黄の四角い鉄の椅子が迷路のように並べられている。椅子の上に置かれていたのは、ナスカの地上絵から壁の落書きまで人の手によって描かれたさまざまなグラフィティの写真。素朴で、ぬくもりがあり、ポップで洗練された会場演出はそのまま服の印象につながった。
フィービー・ファイロは、これまでになくエネルギッシュだ。ジョージ・マイケルのアップビートな曲「フリーダム」のリズムに乗って、モデルは早足に歩く。迷路のようなランウェイは時々交差するため、モデル同士がぶつかりそうになる。それもまたエネルギーに変わる。
ポイントは何と言っても大胆なグラフィティだ。太い筆で無造作に手描きしたような赤、黒、グリーン、黄色、青の線は、黒や白との対比で服をエネルギッシュに彩る。前シーズンに見せたカラフルなチェック柄もいくつか見られるが、大部分はそのチェックから色が飛びだし、規則性なくひと筆で描かれている。4ルック目のフリンジ付きスカーフのようにトライバル色の強い柄も見られる。
靴のソールや服の装飾に使ったゴールドのメタルからは80sの匂いもする。トライバルなムードと、80年代ファッションの情熱をミックスし、フィービー・ファイロが得意とするシンプルなフォルムに落とし込んだという訳だ。ミニマムなスタイルで時代を牽引してきたフィービー・ファイロだが、今シーズンは彼女が持つ温かい人間味や情熱が全面に出ており、そのパワーでまた新しい時代の扉を開けている。
基本は、長めのトップスとひざ下丈のスカートで作るロング&リーンのシルエット。トップスは、肩線を大きく落した細身のタンクトップやTシャツ、ジップアップのポロシャツ風など。数少ないジャケットもヒップを覆う丈で細身だ。ボトムはハンカチーフヘムのプリーツスカートや裾がアシンメトリーになったサテンやレザーのボリュームスカート。いずれもシンプルな形だが、プリーツやアシンメトリーの効果により歩くと裾が大きく揺れる。オーバーサイズのコートもキーアイテムで、ベルトは締めるのではなく、結ぶ。そんなあえての無造作なスタイリングもパワフルだ。