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ハースト婦人画報社のデジタル戦略とは?

 メディア企業の中でもいち早くデジタルに着手し、さまざまな施策を打ち出しているハースト婦人画報社のイヴ・ブゴン=社長兼CEOに、2013年のデジタル戦略における成果と来年に向けた取り組みについて尋ねた。

ーー日本でのこれまでのデジタルにおける成果は?

ブゴン:12年末には定期刊行する全誌のデジタルマガジン化を完了し、翌年2月からは、AppleのNewsstandでの配信を開始した。14年初頭にはアプリのダウンロードが100万を突破しそうだ。そして、13年は、各雑誌ブランドのデジタルプラットフォームの開発に力を入れた。一部を除き各雑誌ブランドでウェブサイトを整え、「婦人画報」が手掛けた京都に特化したウェブメディア「きょうとあす」もスタートした。また、スマートフォンの最適化も2014年2月までに全サイト完了する。eコマースは、目標だった「エル・ショップ」の黒字化を達成した。「エル・ショップ」や「婦人画報のおかいもの」などで培ったノウハウやプラットフォームを生かし、「メンズクラブ」や「ヴァンサンカン」など他の雑誌ブランドでもコマースを展開したい。さらに今後は、ひとつのコンテンツチームとして、雑誌とウェブメディアの編集チームを段階的に融合していく。「エル・ア・ターブル」からスタートし、今後2年かけて進めていく。

ーープリントとデジタルの編集チームの融合を進める意味は?

ブゴン:優良なコンテンツを効率的に活用し、紙、ウェブ、SNS、イベントなどマルチプラットフォームで展開できるようにするためだ。弊社のキーワードのひとつでもあるO2Oの推進を目指している。デジタル系企業と競争する際の強みは、紙媒体があること。一方国内の大手出版社と比べると、グローバルで開発されたプラットフォームを持っていること。それぞれの強みを生かし、紙媒体、デジタルマガジンやSNSと有機的につなげて新しい施策(O2O)を打ち出す。このような連動した動きをするには、編集者のデジタル・リテラシーを強化する必要がある。社をあげてデジタルスキルの育成を進める。会社のひとつのプロジェクトとして力を入れて行く。

ーーデジタル分野における現在の収益は?

ブゴン:現在、全体におけるデジタルの広告、デジタルマガジンとeコマースの売り上げの割合は、20%を超えている。2017年までに、35%以上を目標にしている。うまくいけば50%までいけると思う。その場合はデジタル企業の買収なども選択肢の一つとしてあり得るだろう。営業や販売においては、2011年からデジタルと雑誌担当がひとつのチームとして動いている。それにeコマースの担当者も加わることもある。デジタルの分野でマネタイズするのは、世界どの国においても、ひとつの大きな課題であり、出版企業の経営者が持つ課題だ。

ーーデジタル雑誌は今後伸びるか?

ブゴン:2017年の目標でデジタルの売上35%の中にデジタル雑誌の数字は入れていない。現在、販売売り上げに占めるデジタルマガジンの売り上げは2.5%。これを今後どう伸ばすか。動画などのリッチコンテンツを含むクリエイティブな雑誌のアイデアはあるが、ユーザーがそれを望んでいるかはまだ分からない。コストもかかるため、慎重に進めたいと思う。また、「エル・オンライン」のようなフリーウェブサイトとデジタル雑誌の融合も課題。2014年は、雑誌の記念号などで、制作、デジタル、編集のチームが一体となって今までにない実験的な取り組みをデジタルマガジンで行ってみたい。

ーー今後取り組みたい新たなビジネスは?

ブゴン:「エル・デコ」「モダンリビング」は、BS放送と一緒にテレビ番組を制作している。映像を作っている会社と関係を築くことや、テレビ局やYOUTUBEとのアライアンスは面白い。

ーーブゴン社長兼CEOは、2014年1月1日からハーストマガジンズ・インターナショナルの東アジア マネージング・ディレクターを兼務することになったが、今後、中国、台湾、香港、韓国におけるハーストマガジン社の事業をどのように統括していく?

ブゴン:2013年はアドバイザーとして、韓国を見ていた。韓国の出版社におけるデジタル戦略は、日本の10年前の状態。紙だけで良いのではという声もまだある。そのため、デジタルのアクションプランを実行したい。ラグジュアリーが強い中国はこれまでの10年で良い雑誌でビジネスを行なってきたが、限界に来ている。デジタルは中国でも死活問題になってくるだろう。ヨーロッパにもアメリカにもない良さが日本のデジタルにはある。グローバル化は大きな課題。デジタル戦略を通じて、日本のメディアのプレゼンスを高めるチャンスでもあり、今後は、東アジア各国との連携を強化し、日本でやってきたこともシェアしていきたい。

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