「ジェームス・ロング」の2013-14年秋冬コレクションのインスピレーション源は、アメリカの映画監督ジョン・ウォーターズ。敬虔なクリスチャンの一家に生まれながら、「ヘアスプレー」や「ピンク・フラミンゴ」「セシルB シネマ ウォーズ」などの下品なコメディを数多く生み出す、現存の映画監督だ。映画はもちろん、「趣味は裁判傍聴」「トレードマークは付けヒゲ」というウォーターズの“悪趣味”をコレクションに加えたが、結果はモダンに生まれ変わったクラシック。2日目を終えて、ロンドンメンズのトップに立った印象だ。
ウォーターズに通じる“悪趣味”の一つは、なんと言っても生地使い。「キレイ」とは言い難い、古めかしいブラウンなどを基調とし、さらには生地にはラバーをのせたり、モールでダサい小紋のような柄を描いたりと個性が光る。そんな生地から作るのは、オーバーサイズのボンバーズジャケットと、足元をゴムでクシュクシュにしたジョギングパンツ。しかし、特にジョギングパンツは、スーツに用いるシルクウールなどの素材使いと完璧なカッティングのおかげだろうか?スタイル全体が“みっともない”雰囲気に陥らないための一助となっている。むしろ、「おじいちゃんのタンスから引っ張り出してきた、最高のヴィンテージ」を身につけているような雰囲気だ。
中盤以降に登場したのは、ニットに得意の刺繍飾りをあしらったアイテムたち。ウォーターズに敬意を表した今シーズンは、彼の代表作からアイデアを拝借した「ピンクのフラミンゴ」を刺繍したニットや、「ウォーターズ本人のポートレート」を描いたインターシャが登場し、これは十分に“悪趣味”だった。