中性的なモデルを起用する「サンローラン」、メンズ由来の素材とシルエットに女性的な装飾を加え提案する「ドリス ヴァン ノッテン」などを見ていると、もはや「性差」にとらわれるのは、無意味なことに思えてくる。かつての「ジャンポール?ゴルチエ」や「コム デ ギャルソン」は、"反逆"の意味を込めてメンズとウィメンズの世界を大胆不敵にクロスオーバーしてきたが、エディ・スリマンやドリス・ヴァン・ノッテンは、ハナから性差を大した問題として捉えていない気がする。むしろ「カッコいいならメンズにウィメンズ由来のアイデアを採用するし、美しいならウィメンズにメンズのエッセンスを加える」というフラットな姿勢に立ってモノづくりをしている印象だ。
そんなフラットなジェンダーの捉え方と、自然体のメンズとウィメンズのクロスオーバーの潮流が、「ジバンシィ バイ リカルド ティッシ」(以下、「ジバンシィ」)のコレクションでより鮮明になった。
今シーズンの「ジバンシィ」は、いわゆる"男っぽい"素材とモチーフ、それにカラーパレットで、"女っぽい"シルエットのドレス群を作成。反対に"女っぽい"素材とシルエットのドレスに、"男っぽい"色や柄をのせたドレスも数多い。リカルド本人のロマンティシズムを存分に加え、新たなフェミニティを模索した。
代表的なスタイルは、たとえばハイウエストのレザースカート。レザーという強い素材に、同じく強い黒をのせたのに、ラッフルを加えたり、同色のチュールと組み合わせたり、それをマーメイドシルエットにアレンジしたり。様々なアイデアで女性らしさを加え、得意技ではあったが、時に足かせにもなっていたゴステイストに陥らないよう配慮した。一方、Aラインでマキシ丈のチュールとレースで作ったフリルスカートには、花柄まで加えたのにダークな色使いとちょっぴりのダークサイドをプラス。ブリっ子な女の子のためだけの商品には絶対しない。レザーのジャケットにはベルベッドをハイブリッド。ストリートでユニセックスなバンビのスウェットには、チュールの袖やスパンコールの装飾。男勝りなボンバーズブルゾンはテクノ素材のコルセットでウエストマークし、一方甘くなりがちなドレスにはファスナーが走るレザーを腰回りに加える。男性が発案し、女性がそれに従ってきた、伝統的で旧態依然のコンビネーションやスタイリングから解放され、「逞しいのにフェミニン」なミューズを作り上げていく。フラットな視点に立ち、「美しいから取り入れる」というスタンスで自由に組み合わせる女性像は、今後の大きな潮流になりそうだ。
【コレクションの全ルックはこちら】
【コレクション速報一覧はこちら】