エスパス ルイ・ヴィトン東京は7月9日から9月23日まで、ヤン・ファーブルを迎え「Tribute to Hieronymus Bosch in Congo(2011-2013)(邦題:ヒエロニムス・ボスとコンゴ-ボスを讃えて)展を開催する。同展ではファーブルのアーティスト活動のテーマ「Metamorphosis(変容)」をもっとも現す昆虫のスカラベのサヤバネを素材に用いたモザイク作品を日本で初めて披露する。
同展は、ファーブルの故郷ベルギーが19世紀から20世紀にかけてコンゴに対し行った苛烈な植民地政策の歴史を題材にしている。奴隷制度や略奪行為、賭博などベルギーの文明化が進む一方で搾取され続ける植民地コンゴ、そこに隠された「闇」を初期のフランドル派の巨匠ヒエロニムス・ボスの絵画「地上の悦楽の園」(1503-04)に描かれた寓話や教訓の表象に置き換えて表現した。
ファーブルは「今回の一連の作品は私が大切にしている2つの要素をつなげた。ヒエロニムス・ボスの絵画「地上の悦楽の園」の要素と私の母国ベルギーが19世紀から20世紀にかけてコンゴに対して行った植民地政策の要素。ボスが作品の中で描いた(残酷な)幻想は、数百年経ったベルギーの植民地のコンゴで実際に起こったこと。それはベルギー人の中で遺伝子的に引き継がれていると感じる。作品の中に"美の残酷"と"残酷の美"の両方を見てほしい」とコメント。
ファーブルがコンゴに対するベルギーの植民地政策をテーマにした作品を制作したのは2002年のこと。ベルギー・ブリュッセル王宮からパーマネント・ワークの制作を依頼された時だった。何百万のスカラベを用いて王宮の天井に制作した「Heaven of Delight」は、緑や青の玉虫のサヤバネが光をさまざまに反射する美しい作品である一方で、植民地独立語の批判や批評を込められた。同作品は、30人の若手アーティストをアシスタントに約4ヶ月をかけて完成させたという。この様子は、同展で映像で紹介されている。
その後もコンゴに対する植民地制作の歴史をアーティスティックな観点からリサーチを続け08年、ブレゲンス美術館で開催された個展では、「Heaven of Delight」の一部を床に飯店させて新たに制作し、その上に傷を負った裸の黒人男性が横たわっているインスタレーション作品を披露した。その後も「Tribute to Hieronymus Bosch in Congo」は構成を変化させてさまざまな場所で開催している。
今回、「Tribute to Hieronymus Bosch in Congo」から選ばれたモザイク作品5点と三連画1点に加え、新たなに骸骨や鳥を模した彫刻作品が8点加えられた。光輝く玉虫のサヤバネで作られた14点の作品は、ガラスに囲まれたエスパス ルイ・ヴィトン東京に差し込む光に反射し、作品の裏にある「闇」を見せる。