2016年2月期にV字回復を果たしたアダストリアが新事業・新業態を相次いで打ち出す。「ワイアードカフェ」などを展開するカフェ・カンパニーと合弁会社を設立し、ライフスタイル事業に飲食分野を拡充する一方で、アダストリア本体からは雑貨を軸に、グローバル展開を目指す大型新ライフスタイルブランドを来春デビューさせる。北村嘉輝・執行役員営業第2本部長と、バルスから今年4月にアダストリアに転じた石原嘉文・新規事業開発本部部長が陣頭指揮を執る。
アダストリアは現在、17ブランド・1250店舗以上を有している。「グローバル企業となることを目指しており、売上高5000億円を達成するうえで、新たなグローバルブランドを開発・育成していくことは必要不可欠だ。"自社EC『.st』を含めた年間4000万人以上の買い物客と440万人以上の会員データから分かる顧客ニーズ"や、"『ニコアンド』や『スタディオ クリップ』で培った生活雑貨とアパレルの複合業態の運営力""自社の生産・物流機能や販売管理システムなどのバリューチェーン""スケールメリット"といった自社のノウハウやプラットフォームを活用して、世界で戦える業態を開発したい」と北村執行役員。
新業態は生活雑貨を軸にしたライフスタイル業態で、来春デビューさせ、来春から本格的に多店舗化を進める。3年で20〜30店舗を出店し、3年後に売上高150億円を目指す。将来的には1000億円規模のブランドに育成したい考え。
コンセプトには、「ちょうどいい」を掲げる。「コモディティー(日用品)、コンフォート(快適・機能)、クール(ミニマル)」という3Cをキーワードに、「ファッションから日用品、生活雑貨まで、暮らしをシンプルに、より豊かにするアイテムを総合的に扱う、総合的ジェネラルストア(雑貨店・よろず屋)を目指す」。生活雑貨6割、衣料品4割で、標準売り場面積は150坪(495�u)を想定。販売についてはセルフ型のローコストオペレーションとする一方、商品原価率を高めて、実質的価値の高い商品を提供していく。
ターゲットについては、世界で勝ち残っているグローバルSPAと同様、エイジレス、ユニセックスとし、「フルマーケット・フルターゲットで戦えるブランドを創造する」。出店についても、都市型のファッションビルや百貨店、郊外型ショッピングセンターまで、マルチチャネルに出店できるものとする。都会的でクールでシックなイメージを持ちつつ、客層を限定せず、間口の広いものとする。購買意欲を掻き立てられるようにするために、情緒に訴えかけられるような、素材を軸にした、ユニークかつハッピーなビジュアル展開も計画している。
衣料品の不振などのため、アパレル・専門店の新業態開発にブレーキがかかっている。にもかかわらず、オールドネイビーの日本撤退や、大手アパレルのリストラなどで、空きテナントの跡地リーシングの問題を抱える商業施設も少なくない。リニューアルなどの目玉コンテンツとしても注目が集まりそうだ。
松下久美