TSIホールディングスは、店舗にIoT(アイオーティー、モノのインターネット化)の仕組みを導入する。店舗分析大手の米リテールネクスト社のIoTプラットホームを日本のアパレルとして初めて採用。店内に詳細なデータ解析ができるカメラを設置し、入店率、顧客属性、購買率などの情報を収集・分析し、販売効率のアップにつなげる。TSIの齋藤匡司・社長は「当社が販売 する中価格帯ブランドのリアル店舗は、何もしなければ 売り上げは1?2%ずつ落ちるだろう。勘や経験、どんぶり勘定をビッグデータに基づく店舗運営に切り替える必要がある」と話す。
今月「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」広尾店に導入したのを皮切りに「ナチュラルビューティーベーシック(NATURAL BEAUTY BASIC)」「フリーズマート(FREE'S MART)」「ステューシー(STUSSY)」「ゴア(GOA)」「ヒューマンウーマン(HUMAN WOMAN)」の6ブランド10店舗に導入する。路面店、百貨店、ファッションビルなど異なる環境で試す。路面店である「パーリーゲイツ」広尾店には、天井に4台のカメラが設置された。店の前の時間ごとの通行量と入店率、性別や年齢などの顧客属性、購買した人・しない人が店内をどのような導線で動いたか、どの棚の前で何秒滞留したか、販売員と接する時間、試着する人の割合、購買率などを細かく記録する。集計した情報をもとに、VMDや棚割り、接客方法などを改善したり、販売員のシフトに反映したりできる。リアル店舗とECの顧客情報は一元管理される。秋からTSIがECサイトで本格始動するアプリとも連動させ、スマホにアプリを入れている顧客が来店した際、過去の購買履歴が店舗の販売員にもすぐ分かるようにする。
リテールネクスト社は300以上の小売業にIoTプラットフォームを提供。ファッション関連では、ブルーミングデールズ、シアーズ、アメリカンアパレル、ラルフローレンなどで実績がある。来日した同社のアレクセイ・アグラチェフCEOは「MDと価格だけで戦える時代は終わった。顧客にリッチな買い物体験を提供し、再び来店してもらうためにはビッグデータの活用が欠かせない」と強調した。
「WWDジャパン」2016年7月11日号に掲載
林芳樹