アートディレクターの千原徹也れもんらいふ代表が京都で主宰する「れもんらいふ塾」は、"京都と東京のクリエイティブの融合"をコンセプトに掲げたデザイン塾だ。塾を共同経営しているロフトワークが運営するコワーキングスペース「マテリアル京都」を会場に、グループワークを通した実践的なデザイン講義と、業界で活躍中のゲストを招いたトークイベントを行っている。第11回目のゲストは、軍地彩弓「ヌメロ・トウキョウ」エディトリアルディレクター。「ヴィヴィ」(講談社)や「グラマラス」(講談社)、「ヴォーグ・ガール」(コンデナスト・ジャパン)など数々のファッション雑誌を経たプロフィールから、現在の「ヌメロ・トウキョウ」(扶桑社)での仕事内容までを語った"編集者的お仕事術"や、今求められる"新・女子力論"をテーマに、千原・代表と意見を交わし合った。
軍地ディレクターは、「共感される企画を作るために雑誌編集者に必要なコト」に"気づきのセンス"を挙げる。「ネタに困ると表参道の路上に座り、とにかく人を観察して、気づいたことにタイトルをつける。そしてそれにキャッチコピーとキャプション(説明)を足していく。一つの気づきを事象(タイトル)に飛躍させて、短い言葉に集約する作業が大切」と説明。「インターネットで調べただけでは、何も新しいコトには気づけない。たとえば電車内であっても、周りを見渡しているとドラマに気づくこともある」と続けた。「このように物語(ストーリー)を描く力に長けているのが女子脳」としたうえで、話題は新・女子力論へ。「これからの編集者に求められるのは、顧客の感情ストーリーを想像して、顧客の利益を一番に考えられる力」と分析し、「20世紀に求められていた女子力は可愛さや気遣い、謙虚さなどだった。一方で21世紀に求められるのは柔軟性やコミュニケーション力、ネットワーク力、そして好奇心だ」と語った。
千原・代表はれもんらいふ塾について「トークセッションではゲストと事前の打ち合わせは一切せず、ライブ感で生まれる化学反応を大切にしている。東京と京都をつなぐハブとしての役割を担い、多くの出会いが生まれる場になりたい」とコメント。現在受講中の第一期生は30代前後の社会人が多く、東京や香川といった遠方から駆け付ける塾生もいる。「皆の前のめり感がすごく(笑)、密度の濃いコミュニケーションが生まれている。第一期生を送り出して終わりにするのではなく、継続することがまずは目標」。今回の講義においても質疑応答で塾生たちの挙手が相次ぎ、「皆が前のめりに聞いてくれて本当に楽しかった」と軍地ディレクターは振り返っている。塾は全15回のカリキュラムで構成。これまでのゲストは放送作家の倉本美津留や伊藤弘グルーヴィジョンズ代表、レスリー・キー、中島敏子「ギンザ」編集長など。8月は田中杏子「ヌメロ・トウキョウ」編集長、マドモアゼル・ユリア、遠山正道スマイルズ代表が登壇する。
一井智香子