アメリカでは2~3年前に、ココナッツウォーターのブームが到来した。他のスポーツ飲料水よりもミネラルを豊富に含みながら、脂質やコレステロールはゼロでカロリーも低い。エネルギー代謝を促進するほか、むくみ解消にも効果的であることから、ヨガ・インストラクターや美容感度の高いモデル、セレブらが摂取するようになった。中でも全米シェアNo.1ブランドといわれる「ビタココ(VITACOCO)」は(最近は、虚偽の成分表示で訴えられたが)、人気歌手のリアーナが広告塔を務めたり、マドンナが私財を投じて株主になったりして話題を集めた。
一方、日本ではファッショニスタの間で浮上した“西海岸ブーム”とリンクして、食と美容に“ロハス”を求める人が急増。昨年からは、アルツハイマー病の改善&防止にも有効というニュースが流れ、高齢者からも注目を集める食材に。さらにこれまでは、ヨガスタジオや健康食品店などの限られた場所で販売されてきたココナッツウォーターやココナッツオイルだが、今や近くのスーパーマーケットでも購入できるようになり、一層身近な存在になりつつある。「文藝春秋」が昨年の5月にココナッツオイルの効能に触れて以降、NHKの「あさイチ」など多くのメディアもピックアップ。人気モデルのミランダ・カーも4月に来日した際、ココナッツオイルを摂取していると話した。森永乳業やカゴメを始めとするメーカーが“日本人の味覚に合わせたココナッツウォーター”を発表したのもここ最近の動きだ。
では、健康に良いこの食材はなぜこれまで注目されてこなかったのか。「ココナッツオイル健康法」(WAVE出版)によると、アメリカのマスコミが1980年代に、ココナッツオイルの主成分は飽和脂肪酸で心臓発作を引き起こす、と宣言したからだという。「ココナッツオイルやパームオイルを含む製品は『不健康』であると批判された。それに応えて、映画館はポップコーンを大豆油で作るようになり、食品メーカーやレストランもトロピカルオイルから大豆油に切り替えた」。また、「アメリカ大豆協会が、競合となる輸入トロピカルオイルを排除するために慎重に練り上げた計画だった」と続く。しかし、医療関係者や脂質研究者らの証言により、誤解は徐々に解かれるようになった。ココナッツオイルに含まれる飽和脂肪酸には害がなく、逆に健康を促進するものだと。
ココナッツの製品開発を行なう「ココウェル」や、有機食品を販売する「ブラウンシュガーファースト」は、ブームが起きる以前からココナッツに着手してきた。ココウェルの水井裕・社長は、「ビジネスをスタートしたきっかけは、フィリピンの貧困問題に直面したこと。フィリピンでは3分の1の人が何らかの形でココナッツから収入を得ていると言われるので、ビジネスを通して少しでも彼らの力になれたらという気持ちが強い。いつか日本でも、ココナッツオイルが日常生活の一部に定着してくれたら嬉しい」と話す。また、ブラウンシュガーファーストの荻野みどり・社長も「多くのママに良い食材を届けたいという思いからココナッツオイルの取り扱いをスタート。身体に良いからこそ、使い続けてほしい」と話す。ヘルシーな生活を送るためにも、ブームとして終わらせたくないのがココナッツを使用した健康法。知識を深めて、日常生活に取り入れたい。