「ファッション就活相談室」第3回は、ジャーナルスタンダードやイエナ、エディフィスなどの人気セレクトショップや、家具やインテリア、飲食事業を手がけるベイクルーズ グループ。今回は、同社が今年から新たに取り入れた“ファッションインフルエンサーセレクション”の新卒採用について、矢頭龍一ベイクルーズ人財開発セクションマネジャーに話を聞きました。いち早く“ファッションインフルエンサー”の採用に至った理由は?その狙いと審査ポイントを聞きました。
ベイクルーズ流の英才教育
WWDジャパン(以下、WWD):今年スタートされた新卒採用の”ファッションインフルエンサーセレクション”とは何ですか?
矢頭龍一ベイクルーズ人財開発セクションマネジャー(以下、矢頭):将来のベイクルーズのモノ作りを担うであろう候補生です。総合職は、販売からキャリアスタートしていただき、自分自身の強みや適性を見出してもらうのですが、このファッションインフルエンサー採用では、高いセンスや感性が求められます。マーチャンダイザー(MD)やプレス、バイヤーなどの職種が対象で、入社後は早い段階でモノ作りの知識を得てもらうために展示会に行ったり、バイイングのアシスタントとして海外出張に同行してもらうなど、キャリア・プログラムを立てます。
WWD:どのぐらいの人数を採用するのでしょうか?
矢頭:2017年度初めての試みなので、採用できても2、3人かもしれません。当社は設立38年目を迎えるのですが、この採用は次世代の育成をキーワードにしていて、他社とは違う何か新しい価値を見いだせる人財を早い段階で育成したいと思っています。もし、22、3歳で入社する新卒生ならば、4~5年後には30歳を手前にして中枢になる人財になると思っています。
WWD:英才教育の発想ですね。選考はどのように行うのですか?
矢頭:総合職では3ルックほど、コーディネートを履歴書につけていただくのですが、このファッションインフルエンサー採用では、15ルックのスタイリングのスナップショットを提出いただきます。
WWD:15通りですか!カリスマを見つけ出すオーディションのようですね。
矢頭:はい。彼らがファッションセンスを磨くための日々の行動であったり、どのように情報収集しているのか見極めます。この採用には、各ブランド・セレクトショップの事業部長などの担当者も選考に携わります。ちなみに、総合職との併願を認めません。その道を究めたいという意識を持った人を採用したいと思っています。
WWD:履歴書のスタイリング写真については、どのような写真を提出するか悩む学生が多いと思いますが、審査のポイントは何ですか?
矢頭:その人が店頭に立つイメージを見たいと思っていますので、まずは全体的に見えにくい画質が悪いものは困ります。ブログの影響からか、鏡の前で自撮りをする人も多いですが、トータルのバランスが見えづらい。部屋の中で撮影して、足元にコンビニの袋が引いてあったりとか、背景のクローゼットが開いていて、ごちゃごちゃしていたりするのが映っていたりすると、「表層的にはおしゃれ装ってるけど、内面的には配慮が行き届かないのかな」と判断してしまいます。旅行中の記念写真を貼ってくださるかたもいますが、履歴書に掲載するスタイリング写真としては、伝えたいことが明確ではないと思います。また、細かいですが写真の貼り方一つも、丁寧にできているかどうかは見てしまいますね。
WWD:写真のクオリティーでは、どのようなことを心がければいいでしょうか?
矢頭:自分をいかにきれいに、美しく、カッコよく見せるかっていうことは求められますので、きちんと相手に自分の表現したいものが伝わるように、鮮度の高い素材を使うことは大切です。写真館で撮影して欲しいとは言いませんが、簡易なプリントアウトだど、質は落ちてしまいます。たまに、好きなモデルを雑誌から切り抜いて貼り付けてくる人もいらっしゃいますが(笑)、もちろん本人の写真じゃないとダメですよ。自分の感性を豊かに表現するため、自分の写真と一緒にコラージュをしているものならばよしとします。
WWD:写真以外ではどのような審査を予定していますか?
矢頭:課題に対してのプレゼンテーションも行ってもらったり、座談会を行ったりとブランドのニーズに合わせて変わります。ブランドとのコンセンサスはすごく重要視しています。
酒を飲みに行って、クラブ遊びもしているような人が個性的で魅力的
WWD:実際にどのような人が応募していますか?
矢頭:経営学やマーケティングを勉強している学生が多いですね。特に男性よりも女性の方が積極的なので、男子頑張れ!って思います(笑)。
WWD:実際にベイクルーズが求める人材とはどういった人物像なのでしょうか?
矢頭:素直で謙虚な人ですね。入社後にいろんなことを教わる中で、ある一定自分の価値観とか軸となるものは持っていて欲しいですが、自分の意志に偏ることなく柔軟で素直にチャレンジできる、変化すらも楽しめるような人と仕事をしたいと思っています。だからこそ、面接のときは等身大の自分でぶつかってきて欲しいと思っています。面接は自分をアピールする場だと思いますが、普段の自分よりも数倍も数百倍も装って表現してくれる人もいます。しかし、実際は「分からないもの分からない。教えてください」という姿勢を持って、面接に臨んで欲しいですね。
WWD:就活をする前にしておいて欲しいことはありますか?
矢頭:よく学生に「何か勉強しておくことはありますか?」っていう質問をされますが、とても保守的な質問だと思っています。なりたい姿や、やりたいことがあるのであれば、そこに向けて今、自分に足りないと思うものをきちんと理解して、自己啓発するべきだと思います。例えば、「バイヤーになるためには何が自分の中で足りないのか」と考えて、語学や貿易の知識など、バイヤーという仕事を研究することも必要ですね。自分の強みを改めて整理することにもなると思うので、浮き彫りになった課題に対して、今できることをしてきて欲しい。あとは、たくさん遊んできてほしいですね。ファッションってただ洋服をおしゃれに着こなすことではないと思います。サブカルなことにも興味関心を持っていたりとか、いろんな知識を持っているかで、人としてのおもしろみは全く違います。例えば、先輩たちと接する時もお客さまと接する時も、さまざま角度でいろいろな情報をちゃんと提供できる人は、話題の引き出しがあってコミュニケーション力がある。酒も飲みに行って、クラブ遊びもしてそういう人が結局、個性的で魅力的だと思います。