高級百貨店のニーマン・マーカスとバーグドルフ・グッドマンに身売りのウワサが浮上している。高級チェーンを狙っているとされるのは、ハドソン・ベイ・カンパニー(以下、HBC)。サックス・フィフス・アヴェニュー(以下、サックス)やロード・アンド・テイラーなど460以上の店舗と6万6000人以上の従業員を擁する小売り企業だ。ニーマン・マーカス・グループは9月26日(現地時間)に2016年度の通期決算を発表する予定だが、市場関係者は厳しい数字を予想。これがウワサに拍車をかけているようだ。7月30日終了の9カ月決算で、ニーマン・マーカス・グループのEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益)は前年同期比13.7%減の5億2040万ドル(約520億4000万円)だった。投資家筋は、ニーマン・マーカス・グループの借金はEBITDAの8.1倍にのぼると試算しており、ノードストロムの1.9倍、メイシーズの2.4倍、HBCの6.4倍に比べると大きく、借金が重い負担としてのしかかっているのではないか、と分析する。また、米国ではファッションビジネスが急減速しており、「ニーマン・マーカスの時価総額は、3年前の60%程度にまで落ち込んでいる」と匿名希望の業界関係者は話す。2018年には借金の返済が本格化するようで、残された時間は少ない。
一方のHBCは、ニーマン・マーカス・グループを手中に収めれば、サックスとの相乗効果が見込めると考えている様子。サックスにとって競合のニーマン・マーカス・グループは、多くの都市でサックスよりも良いロケーションでビジネスを手掛けており、買い付けや物流における合理化も魅力的だ。肝心の資金については、昨年カナダ・トロントの旗艦店を6億5000万ドル(約650億円)で売却したほか、サックスの5番街旗艦店を筆頭に多くは土地および建物を所有しており、不動産も潤沢のようだ。対するニーマン・マーカス・グループは、41店舗のうちわずか6店舗しか土地を所有しておらず、ニューヨーク5番街のバーグドルフ・グッドマンも土地は創業一家が所有している。その金額は20億ドル(約2000億円)に上るといわれている。
原文・デヴィッド・モイン&エヴァン・クラーク