ファッション

ゼニアが買収した名門生地メーカーCEOが語る「小規模な企業が世界で勝ち抜くための処方箋」

 エルメネジルド ゼニア グループ(ERMENEGILDO ZEGNA GROUP)は、イタリア・ヴィチェンツァのテキスタイルメーカー、ボノット(BONOTTO)と資本提携する。10月末にゼニアが6割の株式を取得。ボノットも創業家で引き続き4割を持つ。資本提携に伴い、ボノットは経営体制が変わり、ルイージ・ボノット(LUIGI BONOTTO)現社長の息子でセールスディレクターのロレンツォ・ボノット(LORENZO BONOTTO)が最高経営責任者(CEO)に就任する。ボノットは年商3400万ユーロ(約38億4200万円)と規模は中堅ながら、ウィメンズ分野に強い名門テキスタイルメーカーとして知られてきた。ゼニアジャパンのショールームでの展示会のため来日したロレンツオ新CEOに聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):資本提携の理由は?

ロレンツォ・ボノット新CEO(ボノットCEO):ファイナンスが資本提携の理由ではない。僕らは無借金経営だし、現金も豊富にある。けれどこれからテキスタイル産業はもっと厳しくなる。経営から商品開発、販売まであらゆる面でパワーアップすることが必要だった。

WWD:なぜゼニアグループを選んだのか。

ボノットCEO:言うまでもなく、ゼニアはイタリアでも最高峰のファッション企業だ。最高級の毛織物の開発では世界の圧倒的なトップにあるし、世界中にネットワークがある。ただ、牧場からリテールまでを展開し、完結したサプライチェーンを持つゼニアだが、カジュアルやウィメンズに強いわれわれは補完関係になれる。すでに『Zゼニア』や『アニオナ』向けに多くのテキスタイルを供給しているが、今後は一体になってテキスタイル開発を担いたい。

WWD:今後の具体的なシナジーとは?

ボノットCEO:ゼニアは全ての面でレベルが違う。そのため、僕らにとってシナジーは原料の調達から商品開発、販売まで、あらゆる面に及ぶだろう。原料の調達に関して今後は両社でバイイングセンターを作り、コストメリットを出す予定だ。販売面でも例えば、今回の来日でこれまでなかなか開拓できなかったセレクトショップにもすぐにアクセスできた。ゼニアのパワーを実感したよ。商売のやり方に関しても僕らはこれまで最低ロットが200メートルだったけど、ゼニアは50メートルから。ウィメンズとメンズの違いはあるけど、僕らも最低ロットを100メートルに引き下げる予定だ。

WWD:ボノットの資産構成は?

ボノットCEO:われわれはオンリー・ザ・ブレイブと同じ、イタリア北東部の古都モルヴェーナに本社と自社工場があり、土地を除き、資産は2500万ユーロ(約28億2500万円)。ただ、資本構成は変わっても、経営体制などはほとんど変わらない。今後も僕がセールスを、兄のジョヴァンニがクリエイティブを引き続き担う。

WWD:ボノット財団が所有する、1960年代を代表する芸術活動「フルクサス」コレクションはどうなる?

ボノットCEO:ボノット財団は、今回の資本提携には入っていない。ただ、作品の多くはボノットの本社にあり、所有権はともかく、両者は分かちがたく結びついている。ボノット財団は「フルクサス」の作品数を1万7000以上所有しているが、現在はウェブ上のデジタルアーカイブスとしてほぼ全ての作品を公開する一方、本社では実物を工場やショールーム、オフィスなど、あらゆるスペースに展示している。ゼニアは最高品質の紳士服地を作るメディテーショナル(瞑想的な)ファブリックメーカーであるのに対して、僕らはウィメンズ向けのエモーショナルなファブリックメーカー。エモーショナルであるためには、アートからのインスピレーションを得ることが本質的に必要なんだ。

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