日本の公正取引委員会に相当するスイスの政府機関はこのほど、スウォッチグループ(以下、スウォッチ)に対して、同グループが他社にムーブメントを提供しなければならない義務について、その撤廃を求める要望を却下した。スウォッチはかつて傘下に収めたエタの外販中止を2002年に表明していたが、業界の混乱を恐れたスイス政府がこれに介入。これを受けスウォッチは、19年まではエタ社から部品の供給を受けてきた企業などとの取り引きを続行することを約束していた。しかし、この間にLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンやリシュモングループなどは、ムーブメントの内製化に着手。このため、現在スウォッチからムーブメントの供給を受ける時計メーカーは減少傾向にあり、スウォッチにとってスイス政府との約束は重荷になるとともに、他社に提供するムーブメントの製造コストは上昇傾向にある。スイスの時計業界は世界的な景況感の悪化に苦しんでおり、16年1〜9月までの総輸出額は10.6パーセント減。他社供給のために生産ラインを確保し続けることの負担はスウォッチにとって大きくなるばかりで、供給義務の撤廃を求めていた。
マーケティング会社BNPパリバのルカ・ソルカ=マネージングディレクターは、今回の決定はスウォッチにとって若干ではあるものの減収要因になるとした上で、「スウォッチはまるで牢屋の中の囚人のようだ。競争が激化する中、在庫は高い水準で維持しなければならない。しかも、業界にはスマートウオッチが現れた。グリープの低価格商材は、影響を受けるだろう」としている。