「ハケット ロンドン(HACKETT LONDON)」のデザイナー、ジェレミー・ハケットは11月1日、最新フォトブック「MR.CLASSIC YESTERDAY & TOMORROW」の刊行を記念し、代官山蔦屋書店2階のアンジン(Anjin)でトークイベントを行った。同イベントには翻訳とプロデュースを務めたジャーナリストの長谷川喜美も登場。
冒頭、ジェレミーは同書のタイトルである「YESTERDAY & TOMORROW」に込めた意味を「ファッションデザイナーは過去からインスピレーションを受け、再構築し未来に繋げる。そして、今新しいものを生み出すような、温故知新を想起させるタイトルを考えた」と答え、「男性は概して車、時計、靴が好きで、そこにロマンを感じるのだと思う。私はプロではないが、今回は自分が撮影した車や洋服の写真を掲載した。それぞれのライフスタイルに関するピースを繋ぐことで男のロマンを感じてほしい」と語った。また、自身がインスタグラムにはまっていること、愛犬やお気に入りの車、風景の写真1日に最低3回はアップロードしていることも明かし、その理由を「ファッションとかライフスタイルのカテゴリにかかわらず、フォロワーとオンタイムで情報を共有することで新たなクリエーション源を見出すことに繋がるから」とした。ミスター クラシックと称される自身のファッション感について聞かれると「着こなしのルールやガイドラインは作りたくない。それぞれの解釈で好きなように、自由に洋服を着ればいい。僕が行っているのはあくまで、着こなしの提案だ」と話す一方で「紳士的=ダンディと表現することもあるが、イギリスではダンディという言葉は、奇抜という意味も含む言葉。エキセントリックな着こなしは、人生の経験を積むことで自然に滲み出る自己表現のひとつ。それ以外はするべきではない」と話し、「人生経験を経て個性が構築されることでエキセントリシティな着こなしに繋がるのであれば、説得性が生まれる。しかし、若者がとにかく目立ちたいという理由だけで奇抜なファッションをするのは中身が伴っていないために滑稽にさえ映ってしまう」と話した。質疑応答ではジェレミーがクラシックな洋服に目覚めた理由が聞かれ、「21歳、サヴィル・ロウのテーラー、『ジョン・マイケル』に師事し、テーラリングの技術を学び、後に自身のブランドビジネスを考えるようになった」と答え、女性がオーダーメイドのスーツを着ることについては「素晴らしいことだと思うし、どんどん増えてほしいと願うね。(登壇している)長谷川さんもビスポークのスーツを着ている。現在は女性用の優れたテーラーを探すのは困難だが、1970年代は女性のテーラーが数多く存在した。同年代にヘルムート・ニュートンが『イヴ・サンローラン』のスモーキング・スーツを着た女性を撮り下ろした写真が話題になったようにね」と語った。
同書はイギリスで出版された自著「MR.CLASSIC」から10年を経て、ジェレミー自身が撮り下ろした最新のビジュアルとエッセーで構成され、今のクラシック・スタイルと英国のライフスタイルを伝える。日英対訳のバイリンガルエディションで発売。価格は3700円(万来舎)。